灰男

□本当に強くなれたとき
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俺は真白の秘密を知っている。

真白は俺以外の前ではそうならない。

幼い頃からずっと一緒にいて、お互いなんでも話していたから、俺は真白の秘密を知っている。


きっと俺は、頼られているんだと思う。

真白は言葉や態度には表さないけど。


真白は、あの事件があってから変わった。

俺と二人きりのときの態度は変わらなかったけど、表での態度は変わった。

今までの真白とは正反対になった。

あの事件さえなければ、真白は昔のままだったのに。





朝っぱらから色んな女子に声をかけられながらも、教室に辿り着いた。

相変わらずストライクな女はいない。

と言っても今は真白一筋だけど。



「あ、ラビ。おはようございます」

「おはよう」

「おはようさ」



隣の席のアレンと、アレンの前の席のリナリーが挨拶をしてきた。

だから俺は返した。



「なぁアレン、リナリー。聞いたか?」

「なにをですか?」

「真白ってユウと付き合ってるらしいさ」



廊下を歩いているときに耳に挟んだ情報だ。

少しショックを受けた。



『モヤシ、今のバカ兎の台詞を復唱しろ。そっくりそのままだ』

「え?あ、はい。“真白ってユウと付き合ってるらしいさ”」

『誰がバ神田と付き合ってるって?タラし兎』



真白のそんな声が聞こえたのと同時に、足で踏まれたような感覚がして、アレンの机に顔面をぶつけた。



『何故この俺様が、バ神田なぞと付き合わねばならんのだ』

「噂さ、噂。女子が噂してたんさ」



すっと重みが消え、俺は頭をあげる。

振り返ると其処には、黒いオーラをまとって、俺を睨みつけてる真白がいた。



『噂など信じるから、いつまでもテメェはヘタレなんだよ。だいたい俺が、バ神田なんかと付き合うように見えるか?』

「誰がバ神田だ」



ユウの登場。

ユウも黒いオーラをまとってる。



『テメェに決まってんだろロン毛。さっさと切っちまえよ鬱陶しい。いっそ俺がツルリンにしてやろうか。蛍光灯後頭部に設置して、年中ツルピカっと光るようにしてやろうか』

「テメェに言われたくねーよ俺女。女のくせになに俺様気取ってんだよ」



始まった。真白とユウの黒すぎる言い合いが。

こうなったら止められない。


『つか事の発端はオメェじゃねェかよヘタレ兎。世界の何処探したってよォ、テメェのようなタラしでヘタレたバカな兎なんて、存在しねェんだよ』

「え、俺ぇぇ!?世界中何処探してもって、俺兎じゃないし最後話逸れてるさ!」



これがいつもの朝の風景。

こんな変な会話がいつもの会話。

真白は黒いオーラをまとって、罪を俺になすりつける。

アレンとリナリーは笑って見ている。

ユウはまだ終わってねェぞ、的な目で黒いオーラをまといながら、真白を睨んでいる。





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