朝起きた俺は、あることに気がついた。
いつもなら隣でまだ寝ているハズの茜が、いない。
まさか、と思って飛び起きて和室を出る。
と、テーブルの上に一枚の紙を見つけた。
……書き置きだ。
くそっ、やっぱ言っておくべきだったか……。
俺は書き置きを読むとすぐに着替えて、万事屋を飛び出した。
「茜!何処にいる!茜ーッ!」
あちこちを走り回りながら茜の名前を叫ぶ。
だけど茜は一向に見つからない。
まさかもう、高杉に捕まっちまったのか……?
「茜ーッ!」
「旦那」
立ち止まって茜の名前を叫ぶと、後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。
「沖田くん、じゃねェか」
「旦那……茜が、」
「茜?!茜がどうした?!」
「茜が、高杉に捕まりやした……」
ちくしょう、やっぱり茜はもう……。
俺は拳を握り締め、唇を噛み締めた。
自分の無力さを、痛感した一瞬だった。
「高杉は今何処にいる?」
「港でさァ。ついてきて下せェ」
俺は沖田くんについて走り出した。
着いた港は、よく高杉が船を停めている場所。
其処には真選組の奴らが既にいた。
「茜が船の何処にいるかはわかるか?」
「それはわかりやせん」
今すぐにでも、船に乗り込んで茜を助けたい衝動。
それを、俺は必死に抑える。
考えろ。考えるんだ。
どうすれば茜のいる部屋がわかるか……。
大体の位置でもかまわねェ。
なんとかして、茜が何処にいるかを……。
どうする?どうする俺?
…………思いついた。
ああすればいいんだ。
「茜ーッ!」
俺は思いっ切り息を吸い込んで、思いっ切り叫んだ。
茜に聞こえれば、声が返ってくるかもしれねェ。
『銀時ーッ!』
少しして、茜の声が聞こえた。
右だ。
茜は船の右側の何処かにいる。
少し声が近かったから、手前らへんにいるハズだ。
「待ってろ!すぐ助けに行く!」
俺はそう叫ぶと、鬼兵隊の船に乗り込んだ。
茜を助け出したら、目一杯謝って、思い切り抱きしめてやろう。
今たぶん、怖い思いをしてるだろうから。
やっぱ思い込みはよくねェ。
それにしても、どうして俺の嫌な予感は、こんなにも的中するんだろうか……。
高杉に、何もされてなかったらいい。
でも、そう都合よくはいかねェだろう。
とにかく茜が、無事でいてくれりゃいいんだが……。
思い込みが導いた最悪の事態だ。
俺はただただ、君の無事を祈ることしか、どうしようもねェ。