My happiness, your happiness

□11
2ページ/2ページ




船の外から銀時の声が聞こえてから、どれくらい時間が経ったやろう。

まだそんなには経ってない気がする。


あたしは部屋の片隅でひたすら祈り続ける。

銀時がこの部屋を見つけてくれるように。

高杉さんが、銀時が来るまでこの部屋に来ぉへんように。


目を瞑って、体育座りをして膝に顔を埋めていると、部屋の扉が開いた。

あたしはハッとして顔を上げる。

其処におったんは無情にも、銀時やのーて高杉さんやった。



「どうやら銀時が来たみてェだなァ」

『それが、どうしたんですか?』



高杉さんはククッと喉で笑った。

閉じられた扉の向こうからは、人が走る音とかが忙しなく聞こえる。


高杉さんがあたしの目の前まで来て、それでも更に近づいてくる。



「何してる、高杉」



勢いよく扉が開いた。

かと思うと、息を切らせた銀時が部屋に入ってきて、そう言った。


高杉さんがあたしから離れて立ち上がる。

だから、あたしも立ち上がった。



「ククッ、茜を助けてやったんだ。感謝しろよ?」



銀時の顔が、みるみるうちに強張っていくのがわかった。

それを見てか、高杉さんはあたしに、行けって言ってくれた。



『高杉さんには、感謝してます』



あたしは高杉さんに、すれ違ったときに言った。


何事もなかったかのように、銀時に駆け寄る。

銀時はあたしが近くに行くと、なんも言わずにぎゅっと手を握った。

そのまま、いつもよりちょっと早いペースで歩き出す。


しばらく歩いてると、急に空に浮き上がるような感覚がした。

銀時が走り出したから、あたしも一緒に走り出して、外に出てみる。

そしたらホンマに船が空に浮き上がってた。



「飛び降りるぞ、茜」

『へっ?!……あ、うん』



銀時に引き寄せられて、ぎゅっと抱きしめられた。

その直後、銀時は船から飛び降りた。


もちろん下は海。



「思いっ切り息吸うんだ。海に入ったら水面に出るまで、目ェ開けるんじゃねェぞ!」

『っ、わかった』



あたしは出せる限りの息を吐いて、思いっ切り息吸って……。

目を、ぎゅっと固く閉じた。

銀時も、あたしとおんなしことをした。


その数秒後。

ザバァァンって物凄い水の音と共に、あたしと銀時は水の中に落ちた。



これからあたしと銀時がどうなるかはわからへん。

もしかしたらこのまま溺れて死ぬかもしれへん。

意識失って誰かに助けられるかもしれへん。

上手く水面に上がってこれるかもしれへん。


あたしは……死ぬことだけは考えへん。

だって死ぬこと考えてたら、ホンマに死んでまうような気がして。


水面に浮かぶ未来のあたしと銀時が、生きてますように――。

あたしは、祈る。




ピンチのあとのピンチ。

こんなピンチ、初めてや。

そのピンチの結果が幸であるよう、あたしは願う。

必死に、ただひたすら。






(2009.07.23)


次の章へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ