神楽ちゃんが起きてきた。
それも、朝早く。
なんも考える暇もなく、あたしは神楽ちゃんに連れ出された。
定春に乗って神楽ちゃんと話してた。
そうして着いたところは、よくわからん道場。
定春からおりて神楽ちゃんと歩いてると、前から人が歩いてきた。
「いらっしゃい、神楽ちゃん、茜ちゃん」
「姐御ォォォ!」
前から歩いてきたのは、そう、妙ちゃん。
神楽ちゃんは妙ちゃんを見た瞬間、妙ちゃんに抱きついた。
『お、お邪魔します……』
あたしは遠慮がちに、家の中に入った。
「さぁ茜ちゃん、おめかししましょう」
「茜、更に可愛くなるアル!」
『えっ……?』
抵抗する暇もなく、あたしは奥の部屋につれていかれた。
着替えさせられてお化粧までされた。
一体何なんやろう……?
「出来たわ。茜ちゃん、すっごく可愛いじゃない」
「ホントネ!茜ごっさ可愛いアル!」
着せられた着物は、白い生地におっきな水玉模様の丈の短いやつ。
全然わからへんけど、なんか色んな道具で色んなことされた。
その結果、あたしは普段とは全く違うようなってもた。
「はい、これ」
『これは……?』
「プレゼントよ」
『プレゼント?』
紙袋に、二つ綺麗に並んで入ってるいちご牛乳。
プレゼント、って言われても……。
あたしの誕生日は、まだ1ヶ月くらい先。
それに、あたしの誕生日は誰にも言ってない。
「今日は銀ちゃんの誕生日アル。だから茜、銀ちゃんにプレゼント渡すネ」
神楽ちゃんが言う。
状況を理解したあたしは、また定春に乗せられて万事屋に戻ってきた。
家の中に入るのを躊躇うあたし。
そのあたしを、神楽ちゃんと妙ちゃんは、無理矢理家の中に入れた。
あたしは迷った。
けど決心して、あたしは銀時がおるやろうリビングに足を進める。
『ぎ、銀時……っ』
「あ?……茜じゃねェか、ってどうしたんだ?その格好」
銀時は声色を変えへんかったけど、表情は驚いてた。
すっごい、緊張するな……。
こんなことするの、初めてやし……。
緊張の瞬間。
――それは、一瞬だけじゃなくて、瞬間瞬間が緊張の連続。
家の中に入ったときから、今もずっと、あたしは緊張しっぱなし。