銀時の傍におりたいって、ホンマに心の底から思った。
けど同時に、恐怖も襲ってきた。
今までみたいになったらどうしよう……っていう。
「茜、」
いつもの声とは違う。
とても、哀しそうな声……。
銀時のそんな声に、更に涙が溢れ出す。
「俺、茜がいなくなたらどーすればいい?」
罪悪感で胸が苦しくなって、ごめんしか言葉が出んくて。
銀時から離れようと、銀時の胸板に手を当てる。
力を入れて押してみても、銀時から離れられんかった。
それだけ、銀時はあたしを強く抱きしめてくれてる。
「茜がいねェと、俺生きていけねェんだけど」
『ぎん、とき、』
銀時の温もりが、優しさが、溢れるくらい伝わってくる。
こんなにいっぱいの温もり、こんなにいっぱいの優しさ。
そんなん、今までもらったことなんてなくて……。
「なァ、茜」
不意に銀時があたしを離す。
銀時の瞳から、涙が一筋零れたのが見えた。
あたしの名前を呼んだ銀時の声は、弱々しくて。
いつもの銀時なら、考えられへんような声。
見据えられた目からは、視線を外せへん。
「ずっと、俺の傍にいてくんねェか……?」
ちょっとの間、あたしは言葉が出ぇへんかった。
そんなこと言われたん初めてで、むっちゃ驚いて。
『あたしなんかが、』
あたしはいっつも邪魔者扱いされてきた。
どこ行っても、あたしに構ってくれる人なんかおらんくて。
銀時の傍におったら落ち着くし、安心出来る。
でもその反面、いつか捨てられるんやないかって、いつか邪魔者になるんやないかって、怖くて……。
『銀時の傍におっても、ええの……?』
「何言ってんの、当たり前ェだろ」
そっと、銀時の右手が、あたしの右の頬に触れる。
銀時のその右手は、すっごい温かかった。
あたしの求めてるものは、銀時が全部持ってる。
銀時が全部くれる。
「俺ァ茜に傍にいて欲しいんだよ」
『でも、』
「言ったでしょ?茜を捨てたりしないって」
『……うん』
不意にあたしの唇に触れた、銀時の唇。
生まれて初めてするキスは、甘い味がした。
あたしと銀時、二人の願いは……一緒におりたいっていう、同じモノ。
いつまでも傍に――。