あたしが銀時に過去を話してから、二ヶ月くらいが過ぎた。
その二ヶ月は特に事件とかも起こらんくて、ただ平和な日々が続いた。
……あっと言う間やった。
吃驚するくらい、二ヶ月ってのは早くて。
銀時曰く、ベンが通り過ぎる並の早さらしい。
とある日のお昼頃。
あたしらはもそもそと布団から出てきて、何やかんやしてる間に新八くんが万事屋にやって来た。
ダラダラするあたしらに一発喝を入れてから、ご飯の用意をしてくれる。
新八くんの料理って、美味しいからあたし大好き。
『あのさ、みんな』
「どーした?」
あたしが話を切り出すと、隣の銀時が返事をしてくれた。
神楽ちゃんも新八くんもあたしの方を向く。
ちょっとだけ言うのが恥ずかしくなったけど、少しの勇気を出して、あたしは口を開いた。
『今日、どっか出かけへん?』
「いいですね!僕は賛成です!天気もいいですし」
「俺ァどっちでもいいぜ」
「茜が行く言うなら、私行くネ!」
言ってみてよかったと、みんなの返事を聞いて思った。
あぁ、やっぱり万事屋は大好きやなって、改めて感じた。
みんな、温かい……。
何処に行くかは決めずに、お昼を食べ終えたあと、軽い支度だけをして万事屋を出た。
あたし含めて四人で、ただ街をふらふらしてるだけやった。
でも、それでも楽しい。
銀時がボケて新八くんが突っ込んだり、神楽ちゃんが暴走したら銀時と新八くんが止めたり、とにかくむっちゃ楽しくって楽しくって。
一日中、ずっと笑ってた気がする。
銀時と出逢う前なら、こんなこと絶対にあり得へんかった。
逆が多かったな、一日中笑わへん日が、何日も何日も続いて……三ヶ月くらい笑わんかったこともあった気がする。
「茜、今日ずっと笑ってんじゃねェか」
『だって……楽しいもん』
「そりゃァいいことだな」
『うん!』
神楽ちゃんと新八くんが、あたしと銀時の前をぎゃあぎゃあ言いながら歩いてる途中のこと。
不意に腕引っ張られたかと思うと、急に視界が暗くなって、そこが路地やと気づいた。
その瞬間、唇に当たる温かいモノ。
あたしはこの感覚を、この温もりを知ってる。
「茜?」
銀時にキスされたんやってわかった瞬間、あたしはあたしの顔に熱が集まるのを感じた。
たぶんあたし、今、真っ赤。
「茜ー?」
『わ、わわわっ!』
いきなり銀時に顔を覗き込まれて吃驚して、変な声が出た。
それと同時に、後ろにこけそうになってもた。
「っと、大丈夫か、茜?」
『あ、うん、大丈夫、おおきに』
「……茜、顔真っ赤」
『うぅ、あんま、見んとって?』
銀時はあたしの言葉を無視して、あたしの顔をまじまじと見つめてくる。
それが恥ずかしくって、更に顔が赤くなった気がした。
そんなあたしに、銀時はまたキスをする。
好きな感覚で好きな温もりやけど、まだキスをするってことに慣れてへんあたしがおる。
「茜、可愛すぎでしょ」
『……銀時はかっこよすぎ』
もう一回だけ短いキスを交わして、あたしと銀時は路地を出た。
――手を繋いで。
路地を出てちょっと歩いたところに見つけた、神楽ちゃんと新八くんと合流する。
新八くんは、どこ行ってたんですかもう、と言葉は少し怒りながらも、その顔には笑顔があった。
神楽ちゃんはあたしを見るなり、寂しかったアル茜!と叫びながらあたしに飛びついてきた。
突然やったから吃驚してよろけてもたけど、ちゃんと神楽ちゃんを受け止めた。
今日はホンマに楽しかった。
外に出れたってこともあるし、みんなと過ごせたってこともあるから。