朝、万事屋の電話がけたたましく鳴いた。
うるせェなと思いつつ、俺は布団から這うようにして出て受話器を取った。
向こうの用件はまぁいつもとさして変わらずただの依頼だった。
体力がいるとか危険が伴うとかそういう類じゃなくて、誰でも出来るような簡単な依頼だったから、新八と神楽で行くように言った。
だから二人は出払ってる。
『銀、時……?』
「茜。遅かったじゃねェか」
『ん……、そう、かな?』
「ちみっとだけな」
和室から目を擦りながら、まだ眠そうな顔をして茜が出てきた。
やべェ、それ可愛すぎんだろ、反則じゃね?
茜はふわあ、と欠伸をしながら、洗面所の方へと歩いて行っちまった。
ふと開いたままの襖から、奥の和室が見えた。
そこに布団はなかった。
茜が押入れに片付けたんだ。
最近は専ら、茜と一緒に和室で寝ている。
『神楽ちゃんと、新八くんは?』
「あぁ、あいつらなら、仕事に行かせた。夕方までは帰ってこねェと思うぜ」
そのあと茜は、朝飯兼昼飯を食っていた。
俺も茜も二人して、三時くらいまでゴロゴロだらだらした。
ジャンプ読んだりテレビみたり、ただボーっとしたり。
こういうのって、たぶん普通の一日。
「茜、」
『ん?』
茜に訊こうと思いながらもずっと忘れていたことを思い出して、俺は茜に話しかけた。
茜はテレビから目を離して、俺の方を向いた。
何となく、眠そうに見えた。
「茜って、誕生日、」
『11月の17日やけど、どうしたん?』
「もう過ぎちまってんじゃねーか」
『ほんまやな』
手招きをすると、茜はテレビを消して俺の隣に座った。
くしゃりと頭を撫でてやってから、茜の腰を引き寄せて短くキスをした。
茜は少し驚いているが、だいぶ慣れてきたんじゃねェかと思う。
反応が、最初の頃と比べると少しずつ違ってきている。
「遅くなったし、物じゃねェけど、誕生日プレゼントだ」
『ありがとう銀時』
俺の言葉に目を丸くした茜は、すぐに満面の笑顔になって言った。
その笑顔が余りにも可愛すぎて、思わずもう一度キス。
今度は少し長めに。
『銀時、』
「どうしたァ?」
『銀時、だいすき』
「俺もだ、茜」
茜が珍しくぎゅっと抱きついてくる。
普段は言わない“だいすき”まで言ってくれた。
甘えたいとき、ってやつか?
万事屋に茜と二人きり。
いつまでも続けばいいのにと願った甘い甘い時間。