あたしは歩きながら、隣の総悟に訊いてみた。
『なぁ、総悟』
「何でさァ?」
『真選組って、どんなとこ?』
「着いてからのお楽しみでさァ」
実のところ、あたしは真選組についてなんにも知らん。
総悟が一番隊っていう隊の隊長さんで、真選組には局長さんと副長さんと、その他隊長さんがおってまだ色々役職みたいなんがあるってことくらいしか、知らん。
街の人は局長さんたちの名前とか知ってるみたいやけど、あたしは何もわからへん。
江戸に来てから、だいぶ時間が経ってるていうのにも関わらず。
「ここでさァ」
『しん、せ、んぐみ……』
想像してたよりだいぶ立派なおっきい屯所で、驚いた。
それなりにおっきいことはわかってたけど、まさかここまでとは……。
思わずあたしは、屯所を見たまま総悟の声も聞かずに固まってもた。
「茜?」
『ん、あぁ、ごめん。行こう!』
総悟に名前を呼ばれて我に返って、総悟を促した。
二人で一緒に屯所の門をくぐって歩いていく。
まずは外からってことで、あたしと総悟は屯所の中をぐるっと回った。
その途中、必死でミントンをしてる人に出会った。
『あの人は?』
「アイツは山崎でさァ。いつも仕事をサボってミントンやってるばかでィ」
『仕事サボってるんは、総悟も一緒やん』
「俺ァ昼寝という重要な仕事をしてるんでさァ」
総悟と話しながら歩いてくと、山崎という人はあたしらに気づいた。
のはいいんやけど、総悟を見るなり慌ててラケットを後ろに隠して、なんかを必死に言うてる。
言い訳……みたい。
その行動が余りにも面白くて、つい笑ってもた。
「あああああ、あの!沖田隊長!そちらの方は……?」
「茜でさァ」
『燈夜李茜です。よろしくな?』
「山崎退です!監察やってます!」
どもってるというか、焦ってるというか。
緊張してる?
……あれ、何でやろう。
あたしは緊張してないし恐怖もない。
「茜さんは、ミントンは好きですか?」
『ミントン?あたし、やったことないな』
「じゃ、じゃあ今度一緒にミントンしませんか?」
『やる!』
あぁそっか。
銀時の周りにおる人って、みんな温かい。
人情に溢れてる。
今までずっと冷たい人らの中におったからわかる。
銀時も新八くんも神楽ちゃんも総悟も、みんなみんな、心が温かい。
あたしの人に対する恐怖心は知らず知らずに消えてた。
その代わりにあたしは、求めてた場所を掴んだ。