山崎と少しだけ話をしてから俺と茜はまた歩き出した。
茜の笑顔に免じて、サボってミントンをしていたことは土方さんには言わないでおいてやると言っておいた。
「茜、これをあそこの窓の中めがけて投げて下せェ」
『これを?』
ミニマヨネーズ(爆弾)を茜に渡して、投げるように促す。
もちろん指示した窓の部屋は土方さんの部屋。
茜はミニマヨネーズを受け取ると、それを投げた。
意外とコントロール抜群でさァ。
見事に窓の中に入った。
『そ、総悟?!今爆発……!』
「大丈夫でさァ」
入って数秒してから、小さめの爆発音がした。
茜はその爆発音に驚く。
しばらくすると、中から土方さんが出てきた。
「総悟ォォォオオ!!!!」
『あの人は?』
「土方さん、副長でさァ。マヨラーニコ中の」
『……鬼の副長、』
茜は呟いたあと、唖然としていた。
俺はというと、土方さんのいる方に茜を向けてその後ろに立つ。
思った通り土方さんは走るのをやめた。
「総悟てめ、やってくれたな」
『鬼の副長さん?』
「あ、あァそうだが……」
「照れてるんですかィ土方さん。茜可愛いですからねィ」
誰が照れるか!と怒る土方さん。
からかったくれェで、そんなに怒らなくてもいいのにといつも思う。
茜はなんだか信じられないという顔で土方さんを見上げている。
『あたしは燈夜李茜。副長さんは?』
「土方十四郎だ」
『よろしくお願いします、副長さん』
「あァ」
茜が土方さんと話してても嫉妬しないのは、きっと割り切ってるからでさァ。
俺の中で、何かが蠢いて、茜を好きなまま諦めることが出来た。
訳わかんねェけど、要するに茜には何も求めねェって感じでさァ。
ただ笑っていてくれりゃァそれでいい。
「茜、」
『ん?』
「ずっと笑顔でいて下せェ、旦那の隣で」
『……うん』
土方さんと別れてから、茜に言った。
茜は笑って頷いてくれた。
俺のこの想いは、ずっと隠し続けよう。
茜が幸せなら、俺ァそれでいい。
笑顔でいて欲しいということ以外は、何も求めねェ。