朝はいつもみたく、万事屋でごろごろ。
お昼から二人きりで出かけた。
初めは色んなお店を見て回って他愛のない話をした。
三時くらいになったら、銀時行きつけの甘味処でパフェ食べて笑い合った。
四時くらいに甘味処を出て、町外れへ。
これは、あたしの希望。
誰もおらん万事屋以外の静かなところで、二人きりになりたかった。
「どうしたんだ、茜」
『銀時と、二人になりたかっただけ』
「街中でも二人じゃねェか」
『周りに人、むっちゃおるやん』
銀時にぎゅぅっと抱きしめられる。
あったかい……。
いつ何処で、どんな風に抱きしめられても、銀時の腕の中は温かい。
安心出来る――落ち着ける場所。
「茜、」
『ん……』
嗚呼、甘い。
最近やっと慣れてきた、キス。
不意打ちにはやっぱりまだ全然慣れへんけど、こういう感じのは慣れてきたと思う。
……だいすき。
『銀時?』
「……っ!」
不意に物陰か何処かから出てきた、敵。
素早く銀時が反応して、腰の木刀を引き抜いた。
一瞬の出来事であたしには何が起きたんかはわからんかった。
でも、ぎりぎりと刀を合わせる銀時と敵。
あたしはと言えば、銀時の後ろ。
銀時が咄嗟に後ろに下がらせてくれた。
「怪我、ねェか」
『大丈夫。銀時は?』
「俺もだ」
『けど……気ぃつけてな。あいつら、いつか路地で襲ってきた奴ら、やから』
あたしがそれを言えば、銀時は表情にこそ出さんかったけど驚いてた。
ただ険しい顔で頷いて前を見据えた。
じっと、睨み合いが続く。
銀時も敵も、互いに動かへん。
時間だけが静かに流れる。
「くっ……!」
突然の物音。
銀時のちっさい呻き声が聞こえて、あたしは目の前の状況を理解する。
交わる二つの剣。
あたしはここで……見てることしか、出来ん。
下手に動いて銀時の邪魔になるのだけは嫌やから、だからあたしは動かへん。
キィン、と音がしたかと思えば、綺麗にくるくると回りながら一本の剣が飛んできた。
あたしは何とかその剣を取った。
銀時の左手には、真剣。右手には、木刀。
前は無数の敵、後ろは切り立った崖。
“逃”が意味するは“死”……戦う他、生きる術はない。