あたしは叫んだ。
精一杯、銀時の名前を。
『銀時ーーッ!!!』
「茜ーーーッ!!!」
銀時に声は届いた。
銀時の声も届いた。
けど、あたしは落ちていく。
あたしに手を伸ばしてくれてる銀時の顔が、見えた。
歪んで歪んで、今にも泣き出しそう。
その一瞬だけ……時間が、止まったかのように思えた。
『……っ、』
悲鳴も上げずに、あたしは落ちていく。
重力のままに自由落下する。
抗うことなんて、出来ん。
一回だけ崖の上を見てからすっと目を閉じた。
『〜っ!』
ばきばきばき、とえぐい音が聞こえて、全身に激痛が走る。
どうやらあたしは、まだ死んでないみたい。
葉っぱがくっしょんになったんかな。
痛いけど、死ぬって感覚はない。
たぶん……大丈夫。
『い、たい、』
あかん、動かれへん。
ほんならアレか……誰かが見つけてくれんとあたしは死ぬんか。
誰かおったらええけど。
誰も、おらんやろな。
『ぎんとき……』
痛い痛い痛い、痛い痛い痛い痛い痛い、いたいいたいいたいいたいいたいいたいいたい、イタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイ……。
い た い 。
このまま死んだ方が、ましかな。
銀時に、会いたいけど。
まだいっぱい、みんなと話したいけど。
せめて最後に……銀時に、抱きしめられたかった。
キス、したかった。
あの温もりが、欲しいよ。
銀時……。
目から零れて頬を伝った涙が、傷に沁みた。
――茜。茜。
銀時の声がする。
……幻聴?
うん、そうかもしれへんな。
――死ぬなよ、茜。
――絶対ェに生き延びるんだ。
――いいな?茜。
本物、な気もしてきた。
生きたい、生きて銀時に会いたい。
『ぎ、ん、とき、』
――茜。
あたしは……生きる。
生きる決意を固めたところで、あたしの意識は途切れた。
ただ、心の中は不思議と温かかった。