茜茜茜茜茜茜茜茜。
なァ、お前ェは今何処にいる?
何処で何をしている?
答えてくれよ、茜……。
あれから――茜がいなくなってから、二年もの月日が流れた。
その二年の間に俺は、腑抜けて能無しのただの馬鹿に成り下がっちまった。
こんなんじゃもし茜が生きていたときに会わす顔がねェ。
だけど茜のいない生活なんて、これ以上につまらないものはない。
食器はあるのに飯がない状態とまるで同じ。
生活をしている中で何も面白いと感じれねェし……なんせ、俺の中から感情というものが消えた。
「茜、……茜」
もしも茜が死んだのならば、いっそ俺も死のうか。
不意に、万事屋のチャイムがなった。
余りの腑抜けように新八たちは呆れてさっさと仕事へ行っちまった。
だから万事屋には俺しかいないから、仕方なく出た。
『銀時、』
「――……茜、」
扉を開けた瞬間に飛び込んできた懐かしい姿、聞こえた声。
全てが回転した。
茜だ。
茜が、今俺の目の前に、立っている。
『ひ、さし、ぶり』
「……っ」
ぎゅっと強く、茜が壊れるくらいに抱きしめた。
茜、と自然と口から零れて、頬を涙が伝った。
背中に回された腕の感覚に、更に抱きしめる力を強くした。
嗚呼、茜だ。
「馬鹿野郎。凄ェ心配したんだからな」
『ごめんなさい……』
「でも、生きててよかった……。茜が死んでたら、俺、」
『ほんまに、ごめん』
その後俺たちは万事屋の中に入り、茜から事情を聞いた。
俺が茜を捜している間に、茜はちょうど森の中にいた人に助けられて、傷が癒えるまでその人の村にいたらしい。
どういうわけか傷の治りが遅くて、完治するまで半年はかかったんだと。
傷が癒えてからは、助けてもらった上に傷が治るまで村にいさせてもらったお礼にと、茜なりに色々と村の為に尽くしていたということだ。
「茜、」
『ん……』
名前を呼んで、キスをした。
茜、だ。
そうこうしているうちに夕方になり、新八と神楽が帰ってきた。
二人は茜を見たとき、フリーズしていた。
「……茜ちゃん!」
「茜ーっ!会いたかったアル!」
『ごめんな二人とも、連絡無しで』
茜に抱き着く神楽。
新八も茜の傍に寄る。
笑顔だ、茜も新八も神楽も、俺も。
「邪魔するぜ」
「茜いやすかィ?」
聞き慣れた声……多串君と沖田くんだ。
あいつらまた、人ん家に勝手に入り込みやがって。
それでも警察か、なんて考えるけど、あいつらもきっと茜を心配してたに違いねェ。
入ってきたのは真選組のいつもの四人だった。
『総悟!山崎くん!』
駆け寄る茜。
多串君を除いた三人が、笑顔になる。
茜がいると、周りが自然と笑顔になれる。
そういう存在で……大切な存在なんだ、茜は。
『銀時』
「どうしたァ?」
『ありがとうっ!』
「……あァ」
人前だというのにも関わらず、茜は躊躇わず俺にキスをしてきた。
キスのあと満面の笑顔で俺を見るから、俺もただ笑って応えた。
茜が幸せなら俺は幸せだし、俺が幸せなら茜も幸せだ。
今ならそう、堂々と言える、茜が物凄ェ好きだから。―― 完 ――