茜、と沖田くんにそう呼ばれて、笑顔で沖田くんの元へ茜は行く。
少しの嫉妬心はあるが、特別沢山嫉妬しているわけじゃない。
ただ茜がほんの数分でも俺の傍から離れることが名残惜しいだけ。
ひとときも離れずに一緒にいたいと、願ってしまう。
二年も茜と離れていた所為かもしれない。
「幸せ、か」
特に意味もなく呟いた。
いや、意味ならあるのかもしれねェ。
その意味に俺が、気づいていないだけで。
俺がデスクの椅子に座ると、真選組四人が何か色々言いながらリビングを出ていく。
それに続いて、神楽と新八も。
万事屋に残ったのは、俺と茜だけになった。
『銀時』
「どうした?」
『何でもないっ。呼んだだけ!』
「何だよ、それ」
笑顔で言う茜に、俺もつられて笑顔になる。
茜といると自然と頬が緩む。
好き、だからか、否か。
茜にそういう力があることだけは確かだ。
やっぱり、茜は。
「沖田くんと何話してたんだ?」
『生きててくれて、戻ってきてくれてよかった。って言ってくれたから、そのことについて、かな、話してたんは』
珍しいことに茜が、椅子に座っている俺の膝の上に座る。
それも、俺の方を向いて。
俺の反応を伺うように上目遣いで見上げてくるから、余計に可愛い。
キスしたい衝動を、抑えた。
まだ茜て話したいことが残っているから。
「変わった、よな、茜」
『そう?』
「あァ。出逢ってからしばらくは人に怯えて、笑顔が少なかった。でも今は、こんなにも笑ってらァ」
『そう言うてくれて、おおきにな。あたしが変われたんはきっとみんなのおかげ。銀時の周りの人らは、みんな、あったかいから』
茜に、キスをした。
衝動が抑えられなくなったわけじゃない。
ただなんとなく、そんな気がしたから。
ゆっくりと唇を離すと、ぎゅっと優しく茜を抱きしめた。
茜の温もりが伝わってくる。
『けど、』
「……けど?」
そこで言葉を切る茜。
一度俺と目を合わせてから、俺の耳に口を寄せた。
囁かれる、一文。
それを言い終わってから俺を見て照れ臭そうに笑う茜に、二度目のキスをした。
『一番あったかくって、大好きなんは、銀時』
その次に紡いだ言の葉は“愛してる”よりも強い、二文字。