復活
□女が嫌いだった。
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髪型はショートヘア。目は二重で大きい。
鼻は筋が通っていて少し高め口は小さい方。
胸は普通よりある。ウエストは締まってる。
身長は147cmくらい。
と言われれば、誰だって華奢な大人しい感じの、もしくは元気で活発な“女の子”をイメージするだろう。
乱暴な言葉遣いなどしない。
誰にでも優しい。周りに気配りが出来る。
男子によくモテる“女の子”だ。
『何度も言わせんじゃねぇよ!女扱いするなっつってるだろ!』
「し、しかしだね、華紀くん。君は女の子なんだから……」
『俺は女じゃねぇ!男だ!女はとっくの昔に捨てたんだよ。次、女扱いしたらぶっ殺す』
俺は目の前のセンコーを思い切り睨んで、そこを去った。
『何故俺ぁ女扱いされなきゃなんねーんだよ……』
屋上へ行き、一人呟いた。
俺ぁ女は捨てた。もう女じゃねぇ。
「髪型はショートヘア。目は二重で大きい。鼻は筋が通っていて少し高め。口は小さい方。胸は普通よりある。ウエストは締まってる。身長は147か8cmくらい」
『あ?』
「自分で女は捨てたってもよ、容姿は全部女。口癖の“俺は女じゃねぇ。男だ”とか“女は捨てた”とか、ただの強がりにしか見えねぇ」
『山本かよ……』
俺のことを言われたから振り返ってみると、其処にいたのは山本。
「獄寺かツナを期待したのかよ?」
『なわけねーだろ。誰も期待しちゃいねぇ』
「なぁ真白」
『んだよ?』
山本は急に真剣な表情になって、俺の名を呼んだ。
何故か一瞬、聞きたくねぇと思った。
「女だからって理由で、過去になにかあったんだろ?だから真白は女を捨てて、男になろうとした」
『なろうとしたんじゃねぇ。なったんだ』
「まぁ聞けよ。その真白の過去がどんなものなのか、俺は知らねぇ。聞いたことねぇし、真白が話してくれるまで聞こうとも思わねぇ」
『……なにが言いたい』
わからねぇ。
山本の言おうとしていることが。
わからねぇ。
山本の考えていること、思っていることが。
「女は……いや、真白は弱い。自分が壊れない為に、女を捨てて男になり、今生きてる。違うか?」
『…………』
「俺は、さ。真白に女でいて欲しいんだ。真白の過去を、背負ってる荷物を分けて欲しい。俺は真白を……護りたい」
『山、本……?』
女に戻ってもいいかなと思った。
女に戻れそうな気がした。
女に戻りたいと思った。
それ以上に、山本の優しさに触れていたいと、思った。
なぁ真白、とまた山本に名前を呼ばれた。
俺が返事をする前に、山本は俺の頬を両手で包み込んで、俺にキスをした。
「真白を、護らせてくれねぇか?」
『好きに、しろ』
――護って下さい。護ってくれると言うのなら、私を護って下さい。
「なんで泣いてるんだ?」
『泣いてなんか、ねぇよ。目にゴミが入っ、た、だけだ』
――山本の気持ちが、想いが、キスが、嬉しかったから。
「女に戻りてぇだろ?」
『なわけ、ねぇだろ』
――戻ってもいいのなら、戻りたい。女に、戻りたい……。
「好きだ、真白」
『はい……っ』
不意に抱きしめられた。
山本は、私なんかよりずっとずっと大きくて、優しくて、温かかった。
『俺……俺っ、女に戻っても、いいの、か……っ?』
「当たり前じゃねーか。真白は元々、女なんだからな」
私は泣いた。山本の腕の中で泣いた。
気が済むまで泣いた。
涙が枯れるまで泣いた。
山本は、泣きじゃくって取り乱す私を、ただぎゅっと抱きしめて受け止めていてくれた
。
私が泣き止むまで、ずっと。
「真白」
『は、い』
泣き止んだ私にキスをしてから、山本は私の名前を呼んだ。
真剣な声で、真剣な表情で。
「付き合ってくんねーか?」
『……はい』
もう一度、山本は私にキスをした。
そのあと、いつものあの爽やかなかっこいい笑顔で、サンキュ、と言った。