復活

□学んだもの
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一回目は、ツナが助けてくれた。

今回もツナが助けてくれるなんてことは思っちゃいねぇ。


きっとみんな、呆れて見捨てるだろうな。



「今度こそ俺、野球の神さんに見捨てられちまったみてぇなんだ。もう俺にはなんにも残ってねーんだ」

「やっ、山本……」



前みたいに骨折したわけじゃねぇ。

だけど打率は落ちっぱなしで全く伸びねぇし、狙い通りに球が投げられねぇ。

守備も乱れる一方だ。


それに最近は、なにをやっても上手くいかねぇ。

野球の神さんだけじゃなくて、人生の神さんにも、俺は見捨てられちまったのかもしんねぇ。



『ばっかじゃないの』



突然響いた声。

低いのに透き通っていて存在感のある声。


振り向いた目の前に立っていたのは、腕を組んで俺を見ている一人の女子。

穿いてるスカートは誰よりも短くて、ブラウスのボタンは上下一つずつ開いてる。

リボンはちゃんと結ばねぇで首からぶら下げてる。

茶色いセミロングの髪に茶色の瞳、白い肌に筋の通った鼻、二重の大きい目。


真白だ。華紀真白。

同じクラスで幼馴染みで友達で、見た目はこんなで不良っぽいけど実は全然違う。


真白は柵を越えて、俺の隣に来る。

俺と真白は向かい合う形になった。


「真白……」

『野球が出来ないから自殺する?ばかも休み休みにしてよ。ばかすぎて見てらんない』

「なに言ってるんだよ真白!山本は本気で野球が……」

『そんなことくらい言われなくても知ってる。いつから私が武の傍にいたと思ってるの?』



俺の言葉にも、ツナの言葉にも、真白は反論をする。


親父や真白の母さんによると、俺らは生まれたときから一緒だったらしい。

同じ日に似たような時間に生まれて、いつだって隣には真白がいた。

兄妹のように真白とは今まで育ってきた。



「いいんだ、真白。俺は」

『ばか言わないで。野球が好きだから野球するために生きるんでしょ?打率が伸びないからなに?それがどうしたっていうの?誰だってスランプにくらいなるわよ。そんな些細なことで死ぬんじゃ人生もったいない』



俺はなにも言えなかった。

真白は怒るようなタイプじゃないし、まさか真白に言われるとは思わなかったから。


それになにより、真白の言ってることが正しかったから。



『スランプで死ぬくらいなら、生きたくても生き「サンキュ真白」

『わ、ちょっ、武?!』



真白を抱きしめた。

屋上には沢山の人がいると知りながら。



「真白が来てくれなかったら俺、ぜってー死んでた」

『武……』

「よし、戻るか。マジでサンキュな、真白」

『うんっ』



心に刻むべき言葉を覚えた。

かけがえのない人を、失いたくない人を見つけた。


俺はもう、絶対になにがあっても死ぬなんて考えねぇ。







(2009.02.20)


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