近土(近)中心短編

□星空を見上げた奇跡
1ページ/1ページ

中間試験を明日に控え徹夜までとはいかずとも土方はその位の意気込みで頑張っていた。例え1日だけでも手は抜きたく無いとの土方らしい考えである。
眠い目を擦りながら数学の今回のテスト範囲である教科書の練習問題の答え合わせを終えて伸びをした。教科書を閉じる。


「一休みでもすっかな…」


立ち上がり空気の入れ替えをしようと窓を開けた。空は三日月が浮かび雲一つ無く星が一段と輝いてるように見えて目を細め暫し見惚れる。
そして想うは愛しい恋人である近藤の事…。

もう寝てるかなーとか必死に勉強してるかなーとか勉強しながら居眠りしちまってるかなーとか。 最後のが一番当てはまってそうだと思いクスリと笑みを漏らした。

でも願うなら…


「この星空をあの人も見てたら良いなぁ…」


…〜♪〜〜♪〜〜♪〜…


そんな言葉を漏らせばベッドにポツリと置いてあった携帯からの着信音が鳴り響く。近藤専用に登録してある曲だから土方は直ぐ様ベッドから携帯を手に取り受信のボタンを押し耳に当てた。

―トシ、起きてたか?―

「あぁ、一息入れてたとこだ。アンタは?」

―俺は途中まで勉強してたんだがよ…何時の間にか居眠りしてた―

「ははっ、そうか」


矢張り思った通りだなと土方は頬を緩めクスクスと小さく笑っていると電話の向こうで笑うなよーと不満げだが何故か笑った声が響いていた。


「で、何か用だったか?」

―あ…、うん、用っていう程のモンでもねェんだが…今さ、目を醒まそうと思って窓開けたら星がすげー綺麗なんだよ。それ教えたいなぁって思って…―


その言葉に土方は一瞬驚きの表情をするも同じ星空を見ていたという偶然に何とも知れない嬉しさを感じて顔を明るくさせた。


「あぁ、俺も空気の入れ替えしようとして窓開けて見てたんだ」

―マジでか?!偶然だけどすげー嬉しい!トシとこうして同じ星空見てるっつーのがさ!―

「あぁ、そうだな…」


自分が照れ臭くて言えない言葉をさらりと言われ土方は相槌を打つしかなく苦笑した。


―…なぁ、トシ…―

「ん、何だ?」

―会いてェなぁ…―

「バァカ、明日はテストなんだからダメだ」

―分かってっけどよー…―


近藤の言おうとしている言葉は分かっている。隣りで星空を見たいって事なんだろうと思う。それは土方も同じ気持ちだから余計に…


「今はこうして一緒にアンタと同じ星空見られてるってだけで充分だ。それに…」

―それに…?―

「それに…同じ星見てるだけで何だかアンタに見守って貰えてるって思えるからさ…」


照れて言い難いながらも土方は懸命に言葉を紡ぐ。頬は自然に赤らんだ。だからこれが顔の見えない電話で良かったと少し安堵する。


―…そうだな、ちょっと寂しいけど俺もお前の今の言葉励みにもう少し頑張るかな!―

「ありがとな、じゃあ又明日学校で…」

―おう!寝坊すんなよ?―

「ふっ…、アンタもな?」


最後にお互いおやすみと言い合って携帯を切った。その後土方はそれを片手にもう一度星空を見上げる。
変わらず綺麗に煌めく星達に土方は再度微笑み目を細めた。


「アンタと一緒にいられて俺は本当に幸せモンだ」

離れた場所で近藤と一緒に星空を見れた小さな奇跡を土方は忘れないよう深く深く胸に刻んだ。





終わり

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ