土新(銀新)中心短編

□君とアイツとこの俺と
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「あーあ、すげーザンザン降りじゃん、傘持ってくりゃ良かったな」


新八に頼まれた買い物の後少し休憩してこうと立ち寄った甘味処の軒下に立ったまま予想もしなかった雨を見ながら銀時は呟く。
新八に傘を頼もうと思うも通り雨かも知れないと思い直しせめて雨が弱まるのを待とうと買い物袋を腕に掛け建物の壁に軽く寄りかかった。

自分の目の前を傘を差して歩く者、傘が壊れて慌てて走って行く者、色んな人が通り過ぎるのを自然と目で追う。
そんな中黒い隊服に身を纏う目つきの悪い男が此方の方へ慌てて向かって自分の今いる軒下へと並んだ。男は銀時がいるとは気付いて無いようで隊服の上着に付いた雨粒を振って取ろうとするも隣りにいる人物に一言言おうとして表情を歪めた。


「何、俺が此処にいるのがそんなに気に食わないですか?」

「気に食わないも何も変な所で居合わせたもんだって思ったんだよ」


それは俺の台詞だと銀時は思ったがそれでもその男は一言律儀に上着叩かせて貰うと言って銀時に背を向け上着を叩いた。

銀時が普段気に食わないと言うこの男は土方十四郎。真選組の鬼副長という異名を持つ。
しつこいようだが銀時にとってはあまり好まない男だ。自分と同感覚や怖い物嫌いで色んな事で気に食わない相手…。

特に新八の事で。

最近、新八は事ある毎に土方の話しばかりを嬉しそうに話すのだ。


「税金泥棒さんも傘忘れたんですか?そのまま風邪引いて寝込めコノヤロー」

「誰が税金泥棒だ!お前こそ風邪引いてそのままぽっくり逝きやがれ」

「ぽっくり逝っちまったらアレだよ、銀さんのファンが泣いちまうからね!特に新八が!」

「僕が何故貴方のファンの1人で泣くんですか?」


言い争いの最中聞こえて来た冷静な声に銀時は顔を向ける。
そこには自分の傘を差して片方の手には閉じたもう1本の傘を持った新八が目の前に立っていた。


「全く、探しましたよ?頼んだ買い物済ませてさっさと帰ってくればこんな事にはならなかったでしょうに…」


母親みたいな文句を言いながら銀時に傘を渡す。同時に隣りにいた土方に新八は気付く。


「こんにちは、お仕事中に雨が降って来て災難でしたね?」

「全くだ」


その言葉と土方のチラリと送られた嫌な視線に俺の方が災難だわ!と文句を言いたかったが又争う事で新八の説教が増えるだけだと思い土方の先程の視線は気付かないフリをし受け取った傘を差した。



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