土新(銀新)中心短編

□秋の花火
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「おい、眼鏡」

「あ、土方さん、こんにちは」


買い出しに来ていた新八は眼鏡と呼ばれて振り向く。
普段、眼鏡と呼ばれては名前があるのに…と文句を言いたくなるが土方の声で呼ばれても不思議と嫌ではない。そりゃ名前で呼ばれれば嬉しいが呼び止めて貰えただけでも新八は嬉しく思っていた。


「突然呼び止めてすまねーな?」

「いえ…で、何でしょうか?」


土方は白いビニール袋からゴソゴソと何やら取り出すと新八の前で見せる。


「花火…これを僕にですか?」

「ああ、倉庫の掃除してたら出て来たんだ。処分するにも勿体無いし誰かにやろうと思っててよ」

「それが偶然出会った僕ですか?」


新八は花火を受け取りそれと土方の顔を交互に見遣る。
土方はあぁと頷いた。


―せめて自分の事を思い出して…と言って貰えたら―


そう思うも新八は心の中で首を横に振った。自分はしがない万事屋の従業員でツッコミと眼鏡を取ってしまえばそこいらにいるただの子供で…だから土方に対しての気持ちはきっと届かないだろういう事は自負している。


「良かったら一緒にいるあのチャイナ娘と「ひ、土方さんは今日はお休みなんですか?!」


土方が言い掛けた言葉を遮り新八が突然勢い良く尋ねて来た事に一瞬驚くも少ししてあぁと答えた。


「そ、その、折角土方さんが見つけた花火ですし僕と一緒にしませんか?!…あっ…、でもゆっくり休みたいですよね?ごめんなさい!」


新八が真っ赤な顔をしながら謝るのを見ていた土方はクスリと笑い新八の頭に手を乗せクシャリと撫でる。新八は頭に乗った優しく撫でる手に驚いた表情で土方を見上げた。


「分かった。場所と時間はどうする?」


土方の嬉しくて信じられない光景と言葉に暫くぽやーっとしている新八の顔を覗き込みながらもう一度同じ事を尋ねれば慌て出す。


「えっと、場所は町外れの河原で8時辺りで良いですか?」

「おう、了解。じゃ又後でな?」


口端を上げ静かに頷いた土方は手を軽く上げ新八と別れ新八はその後心弾ませながら万事屋で家事をやり過ごした。







「待たせて悪いな」


嬉しくて30分も前から約束の場所へとやって来ていた新八は時間通りにやって来た土方に声を掛けられ振り向く。


「いえ、僕が早過ぎただけなんで謝らないで下さい」


袋の中をガサゴソ探りながら近くまで来た土方へと一本の花火を渡した。


「火はお任せしても良いですか?」


尋ねると土方は黙って頷き嫌な顔しないで何時も自分が使うマヨネーズ型ライターを取り出すとカチッと火を点けて渡された花火の先に点火する。少しするとシューッと勢い良く火花が散った。


「長い事締まってあった割にはちゃんと点いたようだ」


土方が花火を眺めながら呟くように言うとそうですねと新八も頷き自分も手にした花火の先に土方の花火にくっつける。
すると又少しして勢い良く火花が散った。会話も少ないながら2人で楽しむ。そんな感じで花火を続けながら残りは線香花火のみとなった。




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