過去拍手文
□幽霊と一緒
〜幽霊に恋した男〜G
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幽霊と一緒
〜幽霊に恋した男〜G
ミツバが亡くなって一ヶ月が経った。気持ちもだいぶ治まり俺は相変わらず管理の仕事に精を出していた。勿論近藤さんも変わらず俺に接してくる。
でも今日は外へ出掛けて来ると言って近藤さんは出掛けたようだ。平日な為皆学校やら仕事やらでアパートは余計静かに感じた。俺は昨日集まったアパートの家賃の計算をしたり地域で行われる催し物やゴミ出しへの注意を促す回覧版を作ったりと事務仕事に没頭していた。
それらが終わると駐車場の草むしり。
帽子を被り外へ出ようとすれば「ごめん下さい」との声が聞こえ俺は靴を履き玄関の扉を開ける。
するとそこには眼鏡を掛けラフなスーツに身を包む髪の短い金髪の男が立っていた。
「どちら様でしょうか?」
身なりからして何処かのお偉いさんに見える。俺の最も苦手とするタイプかもしれねェと心の中で思うも表情には出さず尋ねた。
「申し遅れてすまない、僕はこういう者だ」
静かな声で詫び眼鏡をクィッと上げ胸ポケットから名刺を渡される。
「で、その病院の先生が何のご用でしょうか?」
「君は生まれる前だから知らないと思うが此処には僕の兄がいてね、随分世話になったんだ」
淡々とした口調だったがその先生の表情が少しだけ緩む。
…近藤って苗字だったしもしかして近藤さんの弟って事か…。しかしあの近藤さんとは似ても似つかねェ野郎だ、丸っきり正反対だな。
そう心の中で考えながら尋ねて来た客人だからと上がるよう勧めた。
「ありがとう、お言葉に甘えて上がらせてもらうよ」
俺は管理人室へと案内し中へ通した。失礼すると言って中に入って行く先生に適当な所へ座っててくれと促す。俺は返事をしたのを確認すると茶を入れる為台所へと立つ。
その間の空気が気まずい。近藤さんなら引っ切り無しに喋って来るのになと思い出しつつ俺は盆に茶を煎れた湯呑みと急須を乗せてテーブルに置き湯呑みを相手の方と自分の所へ置いた。
「此処に来たのは兄の事故以来でね。次何時来ようかと考えている内に僕も何かと忙しくなって来られなくなってしまった」
茶に手を付けた事を見つつ俺も腰を下ろし茶を啜った。
「今日は亡くなった君のご両親のお墓参りに来たんだ」
後で案内してくれないかと尋ね俺は特に断る理由もなく分かりましたと首を縦に振った。何より近藤さんの弟だ、そんなに悪い奴ではないだろうと思った。
少ししてアパートから差ほど離れていない寺の奥に両親が眠っている墓へと案内する。二人の墓石へ水を掛け竹筒に花を刺した。俺は後ろでその様子を何気なく見る。目を閉じ懸命に手を合わせている相手は何を話しているのか知る良しもない。
今まで来れなかった事を詫びてんのか、兄が世話になりましたとか色々を想像したが…。
「案内ありがとう、助かった」
何時の間にかこちらを向き礼を言う先生に俺はどう致しましてと返事をした。
「そういえば君は母親似なんだな?以前一度会ったから良く覚えている」
「はぁ…」
俺は何と言って良いのか分からず気の抜けるような言葉を返す。
それからアパートまで戻るまでポツリポツリと会話を交わす。そのほとんどの内容が近藤さんだ。
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