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□幽霊と一緒
〜幽霊に恋した男〜D
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幽霊と一緒
〜幽霊に恋した男〜D
(近土パラレル)



此処はとある病院。
俺は手に激辛煎餅と果物が入った袋と花屋で買ったかすみ草と一輪のカーネーションを花束として持ってやって来た。
彼女の病室のドアをノックし開けて入るとゆっくり顔を上げ、読んでいたらしい本を膝の上に乗っけて俺を笑顔で歓迎する。


「こんにちは、十四郎さん」

「よぅ…」


俺はベッドの横まで来ると見舞いの品だと彼女…沖田ミツバへ花束を差し出し激辛煎餅と果物の入った袋を軽く上げて見せた。


「わざわざ有り難うございます。まぁ、綺麗…」


花束を受け取ったミツバは更に顔を綻ばせる。それはもう嬉しそうに…素直に綺麗だなと思った。
言葉では照れ臭いから言うなんて出来ないけど。


「総ちゃんは今頃試合の真っ最中かしら?」

「そうだな…剣道部の主将務めてる位だから勝ち進んでるだろうよ」


ミツバの話しに乗りながら俺は花瓶に花を差しては水を適量入れ窓辺へと飾った。


「煎餅食うか?」

「有り難うございます。でも折角十四郎さんが来てくれて頂いたのにお話ししなくちゃ勿体無いですし後で食べます」

「そうか、なら茶でも淹れる」


病室に用意されてある茶のセットに二人分の茶を淹れミツバに渡す。
有り難うございますと又笑顔を見せ受け取るのを見て俺も漸くベッドの横にあった椅子に腰を降ろした。
会話は少なかったがミツバといる空気は嫌いじゃない。落ち着いて居られる。

だから惹かれたんだろうな…。

だけど、だからと言って想いなんて告げて良いのかどうか分からない。
ただの臆病ってだけなのかもだが…。


「悪い、そろそろアパートの掃除とかしなきゃなんねーから帰るとするよ」

「あら、もうそんな時間?ふふっ、楽しいと早いものね?」

「そうだな」


少し残念そうな顔をするミツバに胸が小さく締め付けられるも俺は立ち上がり又来ると言って緩く手を振ると病室を後にした。


「あの、308号室の患者さんのご家族ですか?」


医務局から出て来た医者が俺に声を掛けて来る。


「いえ、身内は今用があって来れず俺は代理で来たような者ですが…」

「親しいなら貴方でも良い、来て貰えますか?」

「…はい」

「率直に申します。308号室の患者さんの命は持って1ヶ月、短くて2週間でしょう。かなり心臓の方が弱まってきてますので…」


俺は其処まで聞いて頭の中が真っ白になった。


ミツバが死んじまう…?



病院を出てから俺はフラフラした足取りでアパートへと帰宅した。ミツバが死んでしまうと告げられた事で頭が一杯で部屋に着くなりテーブルに突っ伏す。


「トシ帰ってたの?お帰り!でもただいま位…ってどした?トシ…」


姿を現した近藤さんの声を聞くも俺は顔を上げる事すら出来なかった。


「…なぁ、近藤さん…」

「ん?」

「俺、何かいけねー事したかな?間違った事したかな?」


いけね、声が震えちまう。


「何言ってんだ、お前は真面目に真っ直ぐ生きて来た!間違った事なんて何一つしちゃいねぇよ」

「だったら何故、俺から大事もん攫ってこうとするんだ!死んじまった両親もミツバも…っ!」


悔しい、悔しくて仕方ねェよ。


「トシ…」


自分の感情をさらけ出した俺の体をそっと近藤さんが包み込んでくれ頭を優しく撫でてくれた。あんだけ嫌だった行為がこんなにも安らぐなんてと笑い暫くそれに俺は身を任せた。




Eへ続く

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