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□幽霊と一緒
〜幽霊に恋した男〜F
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幽霊と一緒
〜幽霊に恋した男〜F



ミツバさんって言う女性の見舞いから帰って来たトシはまるで泣き崩れるように暫く顔を俯かせていた。
それから一週間暗い影を纏い過ごしてるのを俺は幾度となく見掛ける。本人は普通にしてるようだったがな。

俺はどうにかトシに彼女の元へ行くよう説得した。好きな女性なら尚更会いに行けと…。もし何か万が一の事があったら言葉も交わせないままになっちまう。

…後悔しねェように…ってな?


俺の言葉に頷いたトシは病院へと走って行った。
その後ろ姿を見送りながらどうかトシが無事彼女の元へと行けれますように、彼女が無事である事を切に願った…が、



「…綺麗な面だった、笑ったまんま逝ったよ…」


どうやら俺の願いの一つは叶わなかったようだ。
夜明けと共に帰って来たトシはあの時のように嘆き崩れもせず「アイツらしい最後だった」と静かに呟く。しかも小さな笑みを浮かべていた。
それが泣きたい気持ちを抑えているではなく自然に見え俺は「そうか…」と同じように小さく笑って見せた。


「アンタには世話になったな」

「んな事ァねェよ」


素直に礼を言うトシはとても綺麗な笑顔だった。久しぶりに見たなァって思った。


「アンタのおかげでアイツに…ミツバに礼を言う事だって出来たし気持ちを打ち明ける事だって出来た」


悲しい筈なのに病院であった事をトシは嬉しそうに語る。つか、惚気話しになるのかな?だって…


「そしたらアイツも笑って同じだと目で言ってくれたんだ」


妬けるなァと密かに思っていたらふとトシの頬に伝うモノを見つけた。


…涙だった。


だけどトシはそれに気付きもせず彼女の事を語る。否もしくは知ってて業と拭わないだけなのか…。

もしかしたら流れる涙はトシの彼女を想う気持ちなのかもしれない。

だって溢れる涙は今は止まる事を知らないようだから…。


俺はそのままトシの話しを聞く事にした。今日はとことんトシに付き合おうと決めた。

そして幽霊ながらにトシを守って行こうと思った。



トシ、俺は幽霊だけどお前と一緒にいるからな?




Gへ続く

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