お題で土近話
□1.唐突な出会い
1ページ/1ページ
唐突な出会い
あれは勲が6歳の頃、近所の仲の良い友達と遊んだ帰り道の事だった。
最後の一人とバイバイして別れ公園の前を通って行こうとして目の前を見ると小さな子供がうずくまり泣きじゃくっていた。
困ってる者を見掛けたら助けるという両親の教えと何より元から声を掛けてしまう性格の為、勲は迷わずその子供に近付く。
「なぁ、どうしたの?」
声を掛けるも泣き続ける子供は少しして声を掛けた勲の方へ顔を上げた。
…みたことない子だ、あたらしくきた子かな?…
この小さな町を駆け回り殆どの人間を知ってる為勲はそう思った。だからその子を怖がらせてはいけない思いが働き笑顔で大丈夫だよと宥めては自分も一緒にしゃがみ込みその小さな頭を優しく撫でた。
「もしかして父ちゃん、母ちゃんとはぐれたのか?」
少し落ち着いて来たのか真っ赤に腫らした目で勲を見上げコクりと頷く。
「あ、そびに…つ、きて、て、わかんな、くなった…の…」
しゃくり上げながら懸命に言葉を紡ぐ小さな子供の話しを勲は一生懸命に耳を傾ける。
「じゃあ、おれもいっしょにさがす、だからなくな?」
「でも、つかれちゃって…あるけない…」
勲の言葉に少しだけ表情を明るくしかけるが散々親を探して歩き回ってたせいか又元気を失う。
「なら、おんぶしてやるよ!」
すかさず勲はしゃがみ込んだ姿勢でおんぶの体勢になる。最初は躊躇ったが勲の良いからどうぞ!の声に小さな子供はゆっくりその背中に負ぶさった。
「よし!いこう!」
負ぶさった重さを完全に感じれば勲は立ち上がる。遊びに来てたうちを教えてと背中の子供に尋ねた。
「うえがあかのやねで、したはしろいおうち。それでおっきいおうちだよ」
その言葉を頼りに勲は赤い屋根の白くてデカい家を考えすぐに思い浮かんだ場所を目指して歩き出す。
何度か通りかかった事もあるしあれだけデカけりゃすぐ分かるなと考える。きっとこの子はそこへ遊びに来てて道に迷ってしまったのだろうとも。
程なくしてその家が見つかり小さな子の母親らしき人物が門から出て来るところで背中から「ママ!」と呼ぶ声が聞こえて勲は立ち止まる。
「十四郎!」
母親はすぐに気付き駆け寄って来た。勲も直ぐさま背中から十四郎と呼ばれた小さな子を下ろす。
「ママァ!」
母親に駆け寄り抱き着く姿を見た勲はホッと胸を撫で下ろした。
子供を優しく注意し窘めた後、勲に向けて笑みを浮かべた母親は何度もありがとうと礼を述べた。勲も照れ臭そうに「どう致しまして」と答えると背中にいた十四郎という名の子の目線に合わせるとにこりと笑い又小さいその頭をクシャリと撫でる。
「もうママとはぐれるなよ?」
「うん」
一頻り撫でれば母親にペこりと頭を下げて帰ろうとして駆け出す。途中振り返って笑顔を絶やす事なく「こんど、いっしょにあそぼう!」と言って手を振った。
「うん、あそぼうね!」
さっきまで泣いていた顔が笑顔になり勲に一生懸命手を振り返す姿はとてもキラキラしてて眩しくて…
幼い勲の胸をときめかす。
そんな唐突な二人の出会い。
続く