青色緋色の錬金術師
□大佐と少女
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「まったく…今日はデートの約束があったのに…」
「なぁーに言ってんスか、大佐」
「そうですよ
口を動かす暇があるのなら、きちんと書類に目を通しサインをするなり何なりの仕事をして下さい」
東方司令部の一室から、その声は聞こえていた
黒髪の男…ロイ=マスタングがブツブツと文句を言う度に、彼の部下である二人──銜え煙草の男…ジャン=ハボックと、金髪をバレッタで止めた女性…リザ=ホークアイがそれを制す
これが此処の日常
それでも口の減らない上司に、部下が呆れながら溜息を吐くのも日常
まぁ、何と文句を言っていても、結局この男は仕事を熟すのだが
──コンコンッ
不意に部屋の扉からノック音が発せられた
ロイはホークアイに目を向ける
[開けろ]と云う意らしい
それ位口で言えばいいのに、と溜息を一つ吐き、ホークアイはがちゃりと扉を開けた
すると扉の向こうから、ぴょっこりと誰かが顔を出した
軍の者とは明らかに違うその客人に、ホークアイは僅かながら驚いた表情を見せた
「‥‥貴方…此処に何の用?」
ホークアイがその少女に問う
「どーしたんスかぁ、中尉?」
扉で固まっている同僚に、ハボックは堪らず声を掛けた
すると今度はハボックが固まる
「…嬢ちゃん、何処の子だ?」
ハボックは脳内から必死に少女の名を探す
しかし欠片も浮かんでこない
自分の知らない子供だ