雪夢幻想曲
□Secret Crime
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唇が離れると同時に、ギシ、とベッドが軋む音がし、それがやけに耳に響いた
薄い灯りが、自分に覆い被さる男の銀髪を照らしている
男の表情はよく見えない。逆光の所為だろうか。自分の目が滲んでぼやけている所為かも知れない
──自分は何故、泣いているのだろう?
正確には、まだ、泣いてはいない。ただ、瞬きを一つすれば、それは溢れるだろう
怖い? 哀しい? ──どれも違う気がした
「…お兄、ちゃん」
男を呼んでみると、思ったように声が出ない事に気付いた。小さく細く震えた声は、男にどう聞こえただろう
「スノウゥ」
対称的に、兄の声は凛と通ったものだった。しかし、余裕は無さそうだ
彼は一体どんな気持ちで、この状況を作り出したのだろう
「好きなんだ、お前が」
ドクドクと体が熱くなる
お兄ちゃん、どうしてそんな事を言うの。私達は兄妹なのに、それなのに
スノウゥの目はどんどんと霞んでいく。この表情を見て、兄はどんな気分になっているのだろうか
「愛してるんだよ、スノウゥ
お前が欲しい、離れたくない
お前だけに愛されたい。お前だけしか要らない。お前、だけ…、」
不意に、ぽたりと何かがスノウゥの頬に落ちた
その拍子に暫く忘れていた瞬きが行われ、スノウゥの視界が晴れる
落ちてきたものが、兄の涙だと知った