青色緋色の錬金術師

□有と無
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「うん、うん…分かった。じゃあ、おやすみ」

電話の受話器を置くと同時に、レイは溜め息を吐いた
ショウ=タッカーさんが、ニーナちゃんとアレキサンダーを──
今しがたの電話は、その事件の事、それから今夜は軍の方に泊まると云うエドワードからのものだった
エドワードの電話口での声は酷く暗く、震えていた
連日の会話から察するに、ニーナはエドワードによく懐いていた。そのニーナを合成獣錬成の犠牲にされた怒りと悲しみと、そして護ってやれなかった自分への憤りと悔しさでエドワードは一杯なのだろう

「人語を話す合成獣…か…」

タッカー氏は──今となってふとした時の表情や言葉を思い返せば、確かに不安定で危うい一瞬を見せる時があったように感じる
タイミング的に、もしかしたら一体目の合成獣も──
もう後の祭りでしかないが、彼の妻やニーナやアレキサンダーの事を思うとやはりやりきれない
しかしレイはそれ以上に、自身に対して情けなく思い、怒りを感じる事があった

「…ニーナちゃんだと気付かせる事があったのだろうから…少なくとも記憶と意思を持ってた…
 最初の一件以来大きな発表は無いって事は……やっぱり──無から有へは難しい…ね」

錬金術師の、なんと愚かで哀しい事か。"一人言"を呟いて、そんな事を考えてしまう自分に、レイは唇を噛んだ
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