青色緋色の錬金術師

□復讐者と錬金術師
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イシュヴァールの殲滅──ほんの数年前の惨劇。爪痕は今尚深く刻まれている。それは町であったり、人の身体であったり、心であったり──
あの傷の男も、惨劇の被害者。そして此処に居る軍人達も、被害者であり加害者だ

「……彼の"復讐"には正当性がある」
「関係無い人間巻き込んで何が正当なもんか。醜い復讐心を"神の代行者"ってオブラートに包んで誤魔化してるだけだ」
「しかしな。錬金術師を憎んでる男がその錬金術で以て復讐を行ってる。形振り構わなくなった人間ってのは恐ろしいぞ」
「形振り構ってられないのはこちらも同じだ。まだ死ぬ訳にいかんからな
 次は問答無用で──潰す」

ロイの言葉に部下達が強い眼差しでもって応え頷いた
張り詰めた空気を割るようにヒューズが「さて」と膝を打った

「お前さん達はこれからどうすんだ? エルリック兄弟」
「うん…アルを治してやりたいけど俺の腕がこれだしなぁ」

エドワードが左腕で右肩を擦る
その先の機械仕掛けの腕は、先程の戦いで壊れてしまった
ホークアイはそれを見て唇に手を当てて静かに呟く

「そうよねぇ…錬金術の使えないエドワード君なんて…」
「ただの口の悪いガキっすね」
「くそ生意気な豆だ」
「無能だな無能!」
「てめーら好き勝手言いやがって」

ここぞとばかりに次々言われ、更にはアルフォンスにまで「ごめんフォロー出来ないよ」とトドメを刺される
エドワードは若干キレかけたが、溜め息を一つ吐いて、「しょーがない」と溢した

「うちの整備士んとこ行ってくるか
 …そんなワケだから、レイ、ごめんな。約束破っちゃうけど、暫くこっちには帰らない」

"治療の代わりに一緒に住む"と云う数日前の約束を早速果たせない事にエドワードはレイに謝罪した
事態が事態だから仕方が無いのだが──
しかしレイは、何でも無いように答えた

「あ、うん、大丈夫
 私も一緒についてくから」
「……はあぁ!?」

全員目を見開き、エドワードは絶叫、ロイは目の前が真っ暗になりかけた

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