黒と茶の幻想
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「で、アリスの能力って、具体的にどう云うものなの?」
イルミがそう問うと、アリスは「えっとねぇ」と答え始めた
なんて素直なのだろう、とイルミは思う
自分を信用しているのかと考えると、妙に胸が熱い
「私、こっちが実年齢なのね、ちっこくなっちゃうのは念が掛かってる所為で」
「じゃ、アリスは除念師?」
「うーん、ちょっと違う
血を舐めると戻れるのはね、私の体質の問題もあるから、血の除念は私限定
一時的だし、ある程度強い人の血じゃないと不味くて身体が受け付けない」
「ふぅん、じゃあ傷を治したのは?」
「あれも念だけど、宝石使うの
宝石には精霊が宿る…って、聞いた事ある?」
「あぁ──いつだったか本で読んだな、そんな話」
「その精霊の力を借りる能力なの
先刻は治療に使ったけど攻撃に使う時もあるよ
宝石にも得手不得手があるから幾つかに使い分けて持ってるけど」
ジャラ、とアリスの手首から音がする
数個の宝石を細い鎖に括り付けている様だ
「成る程──所で、走る速さはこれで大丈夫?」
「うん、もっと速くても平気だよ」
疲れ切ったアリスに、屋敷までの距離は辛い
そこで、イルミがアリスを抱き抱えて屋敷まで走る事を提案した
当のアリスは自分の脚で走れると言い張ったが、たったの50mでそれは終わってしまった
やはり疲れは隠しきれない
「じゃ、ちょっと飛ばそうか
家までもう少しだから」
言ったイルミの足が地を蹴った
速度は凡そ先刻の二倍程で、二人の髪が強い風に流れる
──そうして、それから幾分も掛からぬ内に、二人は屋敷に辿り着いた