黒と茶の幻想

□世界は
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アリスは人の事を愛称で呼ぶ
…俺以外は

母さんは"おかあさま"。キキョウさんって呼んだらよそよそしいから駄目だって怒られたらしい
親父は"おとうさま"。"おかあさま"の旦那様だからだそうだ
爺ちゃんは"おじいちゃま"。以下略、爺ちゃんは何かすっげぇ喜んでた。意外だ
イル兄の事は"イルミ"だけど、時々"おにーさん"って呼んでるのを聞く
カルトは"カルトちゃん"だし、ミルキ兄に至っては"ミルミル"だ。ぶた君のクセに

それなのに、俺だけは"キルア"のまま

「キルアをキルア以外なんて言えばいいの」
「だって俺以外皆呼び方名前と違うじゃん
 なんで俺だけ名前なんだよ」

言うとアリスは、んー と首を捻って、だってね、と言葉を繋げた

「だってキルアは私と友人の関係を望んでるじゃない
 私は友達は要らないの」
「……アリスは俺とは仲良くしたくないって事?」
「そうじゃないよ
 ゾルディックの人はね、家族みたいな関係だと思ってるの
 おかーさまもおとーさまも皆、現に私の事を娘みたいに扱ってくれてるし
 だからキルアとも、兄弟みたいにしたい
 でもキルアは私に友情を望んでるでしょう
 それは家族の感情じゃないから」

だから私はキルアから一歩距離を置く為に愛称をつけないの
そうアリスが言ったから、兄貴達やカルトはアリスを兄弟だなんて思ってないって教えてやりたくなった
家族間の愛情で、アリスを視てはいない って
でも、そんな事を言えばアリスは傷付くだろうから、俺は黙ったままで居た
アリスは兄弟が、家族が欲しいのだから

「いつか、本当に友達になりたい人が出来るよ
 それは私じゃないから、その時までその気持ちは大事にとっておいて、ね」




本当に
欲しいものを
世界はくれない





玩具だってお菓子だって、欲しいものは何でも買えた
だって俺は仕事が出来るから、金は幾等でも手に入ったから

なのにどうして


一番欲しいものは、いつだって届かない




ねぇアリス
"いつか"なんて日は何時だ?

そんな日はこなくっていい、だから俺にも平等の愛情を──

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