青色緋色の錬金術師

□傷の男と氷の剣
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今しがた"食事"を終えた丸々太った男は両の手でごしごしと口を拭った
親に呼ばれた子の様に女の傍に寄る

「──で、何て言ったかしら? 例の奴は」
「さあ。誰も素性を知らないね
 分かってるのは大柄で褐色の肌、国家錬金術師ばかり狙う、内側からの人体破壊と──ココの傷」

彼は言いながら自らの眉間辺りを指で示す
女はそう、と呟き、

「差し詰め──"傷の男(スカー)"と云った所ね
 行きましょう、グラトニー」

男を連れ、建物の外へ向かった
一人残された彼はテラスの柵に背と肘を置き仰け反るように寄り掛かる
青い空に立ち上る煙と逆さまの焼けた街が映る

「スカーは鋼のおチビさんと焔の大佐を殺しにかかるだろうな。タッカーの騒ぎで二人は必ず奴と接触する
 そうしたら──君はどうする? 氷の妹君よ」

彼は呟き、愉快そうに口元を歪めた

「スカーと出会えば…君の運命は大きく動くだろうね。ははは、楽しみだよ
 なぁ──レイ。君の緋色の瞳は、真実を受け止められるかな…?」

くつくつと喉奥での笑いは次第に高笑いへ変わる
笑い声は空へ、そして戦場となりかけている街へ消えた
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