◆その他版権モノ◆

□ドラゴンボールif 〜惑星ベジータの平凡な一日〜(後編)
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「ガキがああああ――っ!!!!これでもくらえええ――ッ!!!!!」
顔一面を真っ赤にしたナッパはカカロットに向かって連続エネルギー弾を放った。その威力は絶大で、宮殿の壁という壁に次々と穴が開いていく。
「うっひゃあ〜!!あのおっちゃん、スゲェ技持ってんだなぁ〜。…けど、父ちゃんのゲンコツに比べたらあんまし大したことねぇな……って、うわっ!!」
カカロットはナッパの攻撃をすべて紙一重でかわしながら、宮殿中を走り回った。兵士たちの焦りや苛立ちがつのると同時に、宮殿の被害総額はますます増えていく一方である。
「くそったれぇ〜っ!あのガキ、ちょろちょろと動きやがってぇ〜!!」
「ん〜…。あのおっちゃんもしつっけえなぁ〜……あっ!そうだ!!」
カカロットが廊下の角を曲がった。その後を追ってナッパや他の兵士たちも続く。
「待て、ガキィィィ――ッ!!!……んっ!?」
ナッパが角を曲がった時、カカロットの姿は忽然と消えていた。
「いっ……いない!!」
「どこへ消えた!?」
後から追ってきた他の兵士たちが周囲を見回す。目の前に続く廊下は両側に幾つもの部屋が並び、奥には階下へ通じる階段があるだけだ。
「ガキが……つまらん小細工しやがって!」
ナッパはスカウターのスイッチを入れた。ところが、画面には“反応なし”を意味する言葉が表示された。
「バカな!?ガキが消えた!!?」
「どうなってるんだ!?」
他の兵士たちのスカウターにも“反応なし”と表示されているようだ。ナッパは奥歯を噛み締めて怒りに震えた。
「ナメやがって……。捜せっ!!まだ近くにいるはずだ!!」
「はっ……はい!!」
ナッパと他の兵士たちは部屋のドアを一つずつ開けながら、血眼でカカロットを捜した。

ナッパが開けた壁の穴。カカロットはそこから外に出て、外壁にへばりついていた。
「ふぅ〜…。危なかったぁ〜。けど、これでもう見つかりっこねぇぞ!」
先程、カカロットは廊下の角を曲がると見せかけて素早く壁に開いた穴から外に出た。更に、彼は生き物の気配を感じ取るのと同様に、自らの気配を断つ能力も持ち合わせている。そのため、ナッパたちのスカウターに彼の戦闘力が表示されなかったのだ。
カカロットは指先に力を込めてしっかりと外壁を掴みながら、ゆっくり下へ下りた。
「それにしても、あんなおっかねぇツラしたおっちゃんがいっぱいいるなんてなぁ〜。変わったトコだなぁ…ここは……。ま、腹もふくれたことだし、とっととウチに帰ぇるか」
彼はいかなる状況においてもつねにマイペースである。
カカロットが外壁を半分くらい下りた時、突如、何者かが彼のシッポを掴んだ。
「あれ?……うわっ!!」
カカロットはそのまま、再び宮殿の中へ引きずり込まれてしまった。
「なっ……なんだ?どうなってんだ?」
カカロットはシッポを掴まれ、宙吊りのような格好でもがいた。すると、彼を捕らえた張本人が低い声で笑った。
「上で侵入者が出たって報告があったが……まさかお前のことだったとはなぁ…カカロット」
声のした方向に目をやると、そこには父親とそっくりな顔をした男が不適な笑みを浮かべていた。カカロットはその男が放つ異様な雰囲気を直感的に感じ取り、無意識に身構えた。
「おっ……お前ぇ、誰だ!?」
「おいおい。叔父さんの顔を忘れちまったのか?薄情な奴だな……」
その男こそ、バーダックの弟にしてカカロットの叔父であるターレスだ。
カカロットは途端に目をまるくした。
「あっ!お前ぇ……レタスのおっちゃんか!?」
「レタスじゃねぇ…ターレスだ!」
ターレスは苦笑した。
「それにしてもお前、よくこんな所まで来れたな?見回りの奴らは一体何してたんだ?」
「へへへ。メシ探してたら知らねぇうちに来ちまったんだ。途中、おっかねぇツラしたおっちゃんたちと鬼ごっこしたんだぞ」
カカロットは両手を頭の後ろで組みながら楽しそうに言った。
(ナッパたちのことか?あいつら、カカロット一人捕まえるのにどれだけ手こずったんだ?……使えねぇなぁ)
ターレスが部下たちの失態を嘆いていると、シッポを掴まれて宙吊りになったままのカカロットがもがいた。
「なぁ……レタスのおっちゃん、そろそろ放してよ。オラ、ウチに帰ぇりてぇんだ」
すると、ターレスは意味深な笑みを浮かべた。
「そいつは無理な話だな。オレは一応、この宮殿の護衛を任されてるんだ。いくらお前がオレの甥っ子でも、今はただの侵入者だ。侵入者にはお仕置きが必要だからなぁ……」
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