◆コラボ◆

□黄金の空へ(後編)
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――いつからココに居るのか……それは自分たちにも分からない。
しかし、何のために存在するのかは、はじめから知っていた――。

  *

「ルギアという名を聞いたことはあるか?」
「いいや。初耳だ」
ホウオウの問いにエースは首を横に振った。
「ルギアはワタシの対となる存在。古(いにしえ)よりこの世界の海を司る者。かつては“海の神”と呼ばれていたこともある」
「へぇ〜、海の神様か……。おれたち悪魔の実の能力者が海に嫌われるのは、そのルギアってヤツのせいなのか?」
「それは迷信だ。ルギアと悪魔の実は関係無い」
「あ、なんだ。そうなのか」
ホウオウは続けた。
「ワタシとルギアは共に重大な使命を担っている。それは……この世界の空と海を巡り、そこに住まう生きとし生ける者たちの“負のエネルギー”を集めることだ」
「負のエネルギーって?」
「怒りや悲しみ、憎しみや恨み、不安や嘆きといった、自分にも他者にも悪い影響を与える感情。それらは負のエネルギーとなって、生き物の体から無意識の内ににじみ出ている。ワタシとルギアはそれらを自分の体に集めることで、この世界に負のエネルギーが蔓延することを防いでいるのだ」
「……すげェ。お前もルギアも神と呼ばれた理由がよく分かるぜ」
エースは深く感心した。
「けど、世界中から負のエネルギーを集めるって……そんなことしてお前らの体は大丈夫なのか?」
「ある程度集めたら、ワタシとルギアは世界のどこかで闘いを行う。その闘いの中で、体に溜まった負のエネルギーを一気に放出させるのだ」
「ああ、なるほど。要するに、お前らは集めた負のエネルギーを自分の力として解放し、互いにぶつけ合うことで悪いモノを相殺させてるんだな?」
「その通りだ」
ホウオウが世界中の空を、ルギアが世界中の海を渡って集めた負のエネルギーは、互いに闘い合うことによって消費される。そうすることで世界に怒りや悲しみ、憎しみといったマイナスの感情が広がることを防いでいるのだ。
「なんだ。お前ら、そんなすごい使命を果たしてたんなら、もっとみんなから感謝されてもいいんじゃないのか?」
「いや…。ワタシとルギアの闘いは、毎回苛烈を極める。時には島一つを消滅させたこともあった……。そんなことが知れ渡れば、ワタシとルギアの力を悪用しようとする者が必ず現れる。だから、このことは決して誰にも伝えないで欲しい」
「ああ、そうか…。それなら誰にも言わねェよ。約束する」
流石のエースも島ごと消されるのは御免だ。
すると、ホウオウの表情に急に陰が差した。
「しかし……近年、この世界を覆う負のエネルギーが急激に増え始めている。ワタシとルギアの許容範囲を超えることも多くなった」
「許容範囲を超える……?するとどうなるんだ?」
「本来なら、体に溜まった負のエネルギーを出し切ればワタシたちは闘いをやめる。互いに相手を倒すために闘っている訳ではないのだから……。しかし、負のエネルギーが許容範囲を超えていると出し切るまでに時間がかかり、それだけ闘いが長引く。そうなればお互い深く傷付き、瀕死の状態に陥ってしまう危険性にも繋がりかねない」
「じゃあ……まさか、お前がほとんど死にかけた状態で空から落ちてきたのは――!?」
「負のエネルギーが、ワタシとルギアの許容範囲を大幅に超えていた」
エースが初めてホウオウを目の当たりにした時、その体は酷く傷付いていた。ルギアとどれほどの死闘を繰り広げたのか定かではないが、おそらく人間の想像などはるかに凌ぐ闘いだったのだろう。
エースはどことなく、胸の奥が重苦しくなるのを感じた。
「くそっ!なんだってお前らがそんな目に……」
「これがワタシたちの運命(さだめ)だ。今更抗おうなどとは思わない……。ただひたすら、自分の使命を全うするだけだ」
「なんでだ!?なんで急に負のエネルギーは増えたんだ!?」
語気を強めるエースに対し、ホウオウは実に淡々とした口調でこう言った。
「かつての海賊王、ゴールド・ロジャーが処刑されてからだ。世界中に負のエネルギーが増え始めたのは――」
「……っ!!?」
エースは言葉を失った。まさか、こんな時に一番聞きたくない男の名前が出てくるなんて……。
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