◆松本零士作品◆

□大激突!セクサロイド・ユキVSグレート村瀬ロボ
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※この物語はフィクションのフィクションの更にフィクションです。実際の人物、事件、団体及び原作やキャラクター等とは一切関係ありません。なお、熱烈な原作ファンの方は絶対に読まないで下さい。お読みになる際は全て自己責任でお願いします。



私の名はユキ。正式名称は汎用人型機動戦士セクサロイド・ユキMk−U。
とある博士の元でメイドとして平穏な日々を過ごしていましたが、ある日彼は突然の病に倒れました。死を目前にした彼の口から、私は自分の正体とその強大な力の存在を聞かされたのです。そして、自らの科学力を全宇宙に示すという野望を私に託し、彼は息をひきとりました。
私は博士の墓標の前で誓いました。必ず、この力と彼の偉大さを証明してみせる、と……。
未だ見えぬ強敵(とも)を求めて、私の果てしない運命の旅が始まる――。

『大激突!セクサロイド・ユキVSグレート村瀬ロボ』

「惑星シロボタ。金星とほぼ同じ大きさ、密度を有し、重力は地球の約1.5倍。地表の大半を石灰岩が占めている。大気は地球の半分程度しかないが、機動効率に問題無し。生命反応はほぼ皆無…か――」
分析結果を一通り読み終えると、私は眼帯を外した。博士の趣味で時々着けさせられていた小道具だが、この機能の存在は最近知った。
「こんな辺境の地で、あなたのような強敵(とも)と巡り会えるとは思いませんでした、村瀬さん」
振り返ると、彼は腕を組んで仁王立していた。その威風堂々とした姿に圧倒されそうになる。
「俺も…もはやこの星で一人朽ちていく運命(さだめ)だと思っていたが、まさかお前さんのような高性能セクサロイドに出会えるとはな……」
村瀬は感慨深い眼差しを向けてきた。
彼の名はグレート村瀬ロボ。ここ、惑星シロボタで起こった全面戦争において、最終兵器として作り出された戦闘用ロボットだ。しかし、そのあまりに強大過ぎる力を制御し切れず、彼は敵味方関係なく全てを破壊し尽した。
今、この星の有り様が、彼の力の強大さと人間たちの愚かさを静かに物語っている。
「もう一度言いますが、お互い手加減は無しです。どちらかが倒れるまで闘う“デスマッチ”で勝敗を決めます。よろしいですね?」
「死して屍残すまじ。この俺に墓など要らぬ。ただ目の前に立ち塞がる敵を全力で潰すのみ!」
村瀬の鋭い殺気が私の眼を射抜く。
「分かりました。では、よろしくお願いします」
軽く頭を下げると、私は村瀬と距離をおいて構えた。
二人の間を生暖かい風が通り抜け、砂塵が舞う。まるで無声映画の世界に居るような錯覚に陥るほど、静かだ。ただ、時々吹きすさぶ風が、戦争によって失われた幾多の魂の悲鳴を運んで来るようだった。
そして次の瞬間、村瀬は一気に間合いをつめてきた。
(速いっ!?)
「おおりゃあああああ!!!」
村瀬が巨大な斧を振り上げた。その刃は、今まで殺めてきた人たちの返り血で黒く変色している。
私は右に跳んで斧をかわした。しかし――。
「甘い!!」
「!?」
村瀬は振り下ろした斧を地面ごとえぐりながら薙払ってきた。
「くっ!」
私は左の腰にさした鞘からシリウスブレードを抜いた。高振動粒子によって刃が光る。村瀬の斧と接触した瞬間、火花が散った。
「ぬんっ!」
直撃は避けたものの、私は村瀬の怪力におされて10mほど飛ばされた。
「この村瀬トマホークを受けきったのはお前さんが初めてだ、ユキ…」
そう言って、村瀬は静かに斧を休めた。私は体を起こして体勢を立て直す。
(なんて力なの…。まともにぶつかれば、致命傷は避けられない。ならば――)
私はシリウスブレードを構えてコスモジャンプを作動させた。一瞬で村瀬の背後に移動する。
「とらえた!」
私は村瀬の無防備な背中にシリウスブレードを突き立てた。しかし、火花を散らしながら切り傷をつけただけで、彼の背中に刃は刺さらなかった。
「なにっ!?」
「俺の超合金アイアンベルガーは、そう簡単には貫けんぞ!!」
村瀬が振り向いた瞬間、彼の両目からビームが発射された。光の筋は私の右頬をかすめ、左肩を直撃する。
私は即座にコスモジャンプで村瀬と距離をおいた。
(ABCメイド服を貫通した上、1万2千枚の特殊セクサリウム合金に傷をつけるなんて…。グレート村瀬ロボ、予想以上の戦闘力ね…)
ナノマシンの自己修復機能も追いつかなくなってきてる。あまり闘いを長引かせるわけにはいかない。
(次の一撃に、全てを懸ける!)
私は右腕にエネルギーを集中させた。
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