◆その他版権モノ◆

□ドラゴンボールif 〜惑星ベジータの平凡な一日〜(後編)
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そう言うと、ターレスはカカロットのシッポを掴んだまま歩き出した。
「うわっ!ちょっと待ってよ、おっちゃん!お願ぇだから放してよ!!」
サイヤ人はシッポを掴まれると上手く力が発揮できないため、カカロットも体を揺らすことくらいしか抵抗できない。
「そう暴れるなよ。悪いようにはしないさ。ククク……」
低く笑うターレスの様子に、カカロットは不安を抱かずにはいられなかった。

ベジータは王室で部下からの報告を待っていた。侵入者発見からすでに1時間以上経過しているが、未だに侵入者を捕らえたという報告はされていない。
ベジータは苛立つ気持ちを抑えきれず、王座の背もたれを拳で破壊した。
「まだ侵入者を捕らえられんのか!!?」
近くに控えていた兵士が震えるような声で答えた。
「はっ……はい。八方手を尽くしてはいるのですが、侵入者は思いのほか手強く――」
「言い訳はいい!!とにかく、一刻も早く捕らえるよう兵士全員に伝えろ!!!!」
「はっ、はいぃ!!」
ベジータの剣幕に気圧され、兵士は逃げ出すように王室を飛び出していった。
ベジータはスカウターのスイッチを入れると、画面に映し出された“反応なし”の表示を見て舌打ちした。
「まだ反応が消えてやがる…」
先刻、カカロットが自らの気配を断ったため、ベジータのスカウターにも彼の戦闘力と現在位置が表示されなくなっていた。
(どういうことだ?侵入者が自らの戦闘力を押し殺しているとでもいうのか?……だが、あの時一瞬だけ見えた侵入者は紛れもなく、バーダックの息子カカロットだ。あんな落ちこぼれのサイヤ人にそんな事ができるのか?サイヤ人の王子であるこのオレを差し置いて!?)
ベジータは自ら考えた仮定を無理矢理否定するように、小さく歯がみした。
その時、スカウターの画面に突如、カカロット以外のサイヤ人の戦闘力が表示された。
「なんだ?何者かがすごいスピードでここに向かって来る。――この戦闘力は!!?」
ベジータがソイツの正体に気付いたと同時に、階下で城壁が破壊される音が聞こえてきた。

彼は拳に力を集中させると、おもいきり宮殿の外壁をぶち破って突入した。そのあまりの勢いに急ブレーキがきかず、彼はさらに壁を破って隣の部屋まで突っ込んでしまった。
目の前で繰り広げられるあまりにも急な展開を目の当たりにして、ターレスとカカロットは唖然とする。すると、突っ込んできた男が隣の部屋から出てきた。
「いってぇ〜。ちぃとばっか、加減を間違えたな……」
彼は頭を押さえながら言ったが、その体にはかすり傷一つ無い。
ターレスは出てきた男に驚愕の眼差しを向けた。
「バーダック!?」
「あれ?とーちゃん!?」
シッポを掴まれて宙吊りになったままのカカロットも、きょとんとした声を上げる。
バーダックは二人の様子を目の当たりにした途端、殺気のこもった目つきでターレスを睨んだ。
「ターレス!オレのカカロットを放せ!!」
しかし、ターレスも怯むことなく口元に笑みを浮かべて言った。
「放せ…だと?いきなり大胆な不法侵入をしておいて、人を悪者のように言うなよ。オレは宮殿の護衛隊長として侵入者を捕らえただけだ。それに、兄貴はもう王直属の護衛部隊から脱退したんだろ?だったら、オレに指図する筋合は――」
ターレスの言葉を無理矢理中断させるように、バーダックは拳でおもいっきり壁を殴った。ビスケットが粉々に砕けるように壁は音を立ててもろく崩れ落ちる。
バーダックは更に強い口調で言い放った。
「ごちゃごちゃ言ってねぇでとっとと放せ!!!それとも、今ここで決着をつけてぇのか!!!?」
激しい怒りのオーラがバーダックの全身を駆け巡る。その様子をカカロットはただ茫然と眺めた。
すると、ターレスの目が緊張をはらんだ色に染まった。バーダックとターレスの戦闘力はほぼ互角。まともにぶつかり合えば致命傷は避けられない。
二人――正確には三人だが――は一定の間合いを保ったまま、微動だにせずじっと睨み合った。すると、崩れ落ちた壁の破片が小刻みに震え始めた。二人が発するすさまじい闘気がぶつかり合い、周囲の空間にまで影響を及ぼしているのだ。
バーダックがゆっくりと一歩を踏み出そうとしたその時、ターレスの背後からナッパを先頭に兵士たちが押し寄せてきた。
「さっきの音はなんだ!?……って、あっ!あのガキ!!?」
ナッパはターレスの手に捕らえられているカカロットを見つけた途端、目の色を変えた。カカロットもナッパと目が合うと、彼なりに慌てた様子で言った。
「あっ!タコ頭のおっちゃんだ!」
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