◆その他版権モノ◆

□The Shackles of Darkness -闇の枷-
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  *

男は今まで見てきた悪夢を払うように首を横に振った。
「はぁ〜…。なんということじゃ……。イワンにそんなつらい過去が……」
『ギルモアハカセ…。ボクハ……マチガッテイタノ?』
腕の中の小さな赤ん坊に、男は子守唄を聴かせるように穏やかな口調でゆっくりと語り掛けた。
「何が正しくて何が間違っていたのかは、わしの口からはよう言えん。じゃが、少なくとも善悪の判断は長い年月をかけて、多くの人とふれあうことで培われていくものじゃ。イワンにはまだそれが早過ぎたんじゃろう。過去の出来事を変えることはできないが、あまり自分を責めてはいかんぞ…」
『…………』
すると、部屋のドアが開いて一人の女性が入ってきた。
「ギルモア博士、どうされたんですか?」
「おお、フランソワーズか。丁度良かった。イワンがよく眠れるように、ミルクを作って飲ませてやってくれ」
男は赤ん坊を女性に託した。女性は赤ん坊を抱きかかえると、その穏やかな表情を見て首を傾げた。
「あら?イワンはこんなによく眠っているじゃないですか?」
「む?そうじゃったか…。まあ、イワンも一人きりにしておくと寂しいじゃろうから、みんなが居る所で寝かせてやってくれ」
「わかりました」
女性は優しく微笑み、仲間たちが居るリビングへと向かった。男はその背中を感慨深い眼差しで見送ると、暗い子ども部屋で一人静かに俯いた。
揺りかごに溜まっていた闇が溢れ、男の足元に絡み付く。罪悪の影は背中にも重くのしかかり、十人の迷い人を捕らえて放そうとしない。
終わりの見えない闘いの日々――。未来(あす)はどこにあるのだろうか。
-END-
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