◆その他版権モノ◆

□サバト
2ページ/6ページ

(…ちゅ……くちゅ…ちゅ……ぴちゃ……ちゅる……)
二人の肉体の間にある隙間が急激に消えていく。
了は深く味わうように明の口内をじっくり舐め回す。そして、明は火照った体を冷まそうと求めるように了を強く抱き締めた。
舌が絡み合う湿った音と、シーツが擦れる乾いた音とが、薄闇の寝室に淫魔な交響曲を響かせる。
「ちゅう……くちゅ……ぷはっ……はぁ……」
やがて、了がゆっくりと顔を上げた。下にいる明は胸を大きく上下させ、その口元は了が着けた口血紅(くちべに)で汚れている。
了は自分の口元を拭うと、手の甲に付いた血を舌先で舐め取った。そして再び体を倒し、明の口元も同様に清めた。
「明…舐めて」
目の前に差し出される了の指先。そこからはまだ赤い雫が滲み出ている。
熱で火照った頭ではまともな思考もできず、明は言われるがまま口を開けた。
了の指先が口内に入ってくる。予想していた通りの味が……しない。味覚もおかしくなっているのだろうか。とにかく鉄の味がしなかった。
「クスッ…。そんなに熱心に舐めなくてもいいよ、明」
気が付けば了の指先を強く吸っていた。明は急激に押し寄せてくる羞恥の波に苛まれ、慌てて了の指を吐き出した。
「了…。なんで…こんなこと……?」
「明、ロウソクの炎を見て」
「…?」
了が視線で促す。明もつられてサイドテーブルに置かれた燭台を見た。赤いロウソクの先に灯った炎が静かに揺らめいている。
それを見た瞬間、再び明の体内から焼けるような熱が込み上げてきた。
「熱っ…!」
眉を寄せる彼に了はそっと囁く。
「意識がとびそうになったらロウソクの炎を見るんだ。そうすれば自我を保っていられるから。どんな苦痛や快楽に呑まれても、決して自分を失ってはいけないよ」
了は明の頬に軽くキスをした。そのまま首筋、肩、二の腕、手、胸へとついばむようなキスの雨を降らせ、更にわき腹、腹部、足の付け根、太ももの内側、ふくらはぎ、足の爪先へも口付ける。無論、性器へも……。
「あ…っ」
男根の裏筋に了の冷たくて柔らかな唇が触れる。
(了が……俺に……触ってる……)
明は戸惑いながらも、今まで感じたことのない不思議な心地良さに包まれ、目の前の彼を拒もうとはしなかった。
「明、背中を向けて」
急に了が離れると、明は一瞬物足りなさを感じている自分を認識した。しかしすぐに我に還り、気恥ずかしさからかおずおずと体を伏せた。
「了…。やっぱり……こんなの…変だ…」
「どうして?」
枕に顔を埋める明の背に唇を寄せる。
「だって……裸になって…こんな……」
「明は綺麗だ」
言いながら、了は背中から腰へと降りていく。
「…じゃなくて……男同士で…裸になって…触れ合うなんて……」
「そんなことを気にしていたのか?」
明のふくよかな双丘にキスをして、了は顔を上げた。
「裸になって触れ合うことは、お互いを理解する上で最も効果的かつ原始的な手段だ。それには性別なんてなんの意味も持たない。おかしな倫理観にとらわれて余計な壁をつくってしまうことの方が、余程変だと思うよ」
言いながら、明の背を指先でなぞる。それは不規則な動きで、何か図形のような、文字のようなものを描いているようだった。
「で…でも……俺……ん…」
了が再び背中にキスをする。心臓の裏側辺りに…。彼が口付けた箇所はいずれも薄紅色の痕を残し、奇妙な斑点模様となって明の全身に点在していた。
「さあ、明。こっちを向いて」
しかし、明は動こうとしない。動けなかった。熱と心地良さで全身の力が抜け、もう指一本動かすのが困難だった。
すると、そのことを悟ったのか、了は優しく明の体を抱いて向きを変えてあげた。力無く仰向けになる明の頬をそっと撫でる。
「すまない…。やはり人間の体でこの行為に耐えるのは酷だろう。でも、もうすぐ終わるから安心して。そうすれば明は――」
了は言い掛けた言葉を寸前で呑み込んだ。今はまだ伝えるべきではない。本当の儀式(サバト)はまだ先なのだから……。
了は明の両足を開かせた。股の間で勃ち上がりかけた明自身が微かに震えている。
「了…?」
目の前の親友を全く疑おうとしない純粋な瞳。それを汚してしまうのは少々忍びないが、了は意を決して腰を突き出した。
「明…。一つになろう」
次の瞬間、明の中に衝撃が走った。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ