◆その他版権モノ◆

□性 sex
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「……鍵は彼らが持っていたはずよ…。どうして、ドアを開けることができたの?」
森野は相変わらず自分の都合で話を進める。
「気が付いたらポケットの中にマスターキーが入っていたんだ」
「そう…。とても説得力のある言い訳ね……」
森野はこれ以上尋ねても無駄だと悟ったのか、僕から顔を背けた。
僕は一旦鞄を置いて、少し開いたままになっていた講義室のドアから外の様子を窺った。廊下に人気は無く、とても静かだ。最終下校時刻はとっくに過ぎている。
僕は再びドアを閉めた。すると、教室の中が心地良い闇と静寂で満たされた。
振り返って森野の様子を窺う。彼女はまだ床に横たわっていた。流石にショックが大きいようだ。
いつもならこのまま森野を放っておいて帰るはずなのだが、気が付けば、僕は彼女の上に覆い被さっていた。
「なんのつもり……?」
森野が感情のこもっていない黒い瞳を僕に向ける。僕は何も考えない内に、自然と言葉が喉をついて出ていた。
「どうやら、生きた女性の肉体を観察してみたいという知的好奇心が、僕の体を動かしているようだ」
「今の状況から判断すると、その言い訳の信憑性はほぼ皆無に等しいわね……」
森野の言っていることの方が正しい。確かに、今の状況は以前見たアダルトビデオの一場面と非常に酷似している。
「なら、少し言葉を変えよう」
そう前置きして僕は言った。
「君の体のどこにナイフを刺すか確認したかったんだ。君だって、殺される時はあまり時間がかかって欲しくないだろ?」
この言い分には森野も少し納得したようだ。
「そうね…。殺されるなら、一瞬で楽になりたいわ……」
そう言って、森野は遠くを見るように天を仰いだ。かつて自分の手で殺した双子の姉のことを思い出しているのだろうか。
森野は再び僕に目を向けた。
「今すぐに殺してと言ったら、あなたは望み通りにしてくれるの?」
「できればそうしたいけど、さっき同級生に僕の姿を見られてる。もし君がここで死ねば、真っ先に疑われるのは僕だ。だから、残念だけど今すぐにというのは無理だね」
「そう…。それもそうね……」
森野はそっけなく僕から目をそむけた。
結局、僕がどうして森野の上に覆い被さったのか詳しい理由はわからないが、気が付けば僕は彼女の制服をめくり上げ、その白い肉体を観察していた。

暗い教室の中でも、森野の肉体はその曲線をはっきりと認識できるくらい白かった。腹部の中央には、胎内で母親とつながっていた証である臍帯(さいたい)の跡が小さな穴のように存在している。また、男性の腹部よりも丸みがあり、よりふくよかな印象を受ける。
僕は森野の腹部にそっと触れてみた。一瞬だけ彼女の肩が上がった。
軟らかく、そして温かい。森野は時々「自分の手は死人のように冷たい」と言っていたが、彼女の素肌はまぎれもなく生きた肉体であると主張するように温かかった。
僕は触れた手をゆっくりとみぞおちまで動かした。すると、森野が顎を上げて声を押し殺した。彼女の素肌はとても滑らかだ。
みぞおちのやや上に3本指を当ててみる。皮膚を通して森野の鼓動が伝わってきた。ここにナイフを立てれば、きっと刃の乾燥を抑えられると確信できる。同時に、その瞬間を容易に想像することができた。白い肉体を胸部から溢れ出たモノが赤く染めていく。彼女の死に様は一生僕の記憶に残るだろう。
「……っ……あ……」
ふいに、森野がか細い声を上げた。それは普段の彼女の声からは想像できないほど高く透き通り、教室の暗い闇に呑み込まれた後もかすかに余韻を残した。
森野がなぜ声を上げたのか不思議に思っていたが、よく見ると僕は彼女の乳房に触れていた。
女性の胸部には乳房という独特の器官が存在する。乳房とは、乳児の哺乳器として発達する乳腺を入れる半球状の胸の高まりのことだ。男性にも乳腺は存在するが、女性の方がより発達するため乳房は女性にしか見られない。また、発育の個人差によってその大きさや形も異なってくる――という説明を解剖学の本で読んだことを思い出した。
森野の乳房は特別大きいとはいえないが、それなりに発育しているような印象を受ける。身に着けている下着は白い。彼女は暗い色調を好むが、下着は例外のようだ。
「……ん……あ……っ……」
森野がまた声を上げた。どうやら声を押し殺しきれないようだ。無理もない。僕が下着の中に手を入れて、乳房を直接揉んでいたからだ。しかも、いつの間にか両手になっていた。
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