◆コラボ◆

□黄金の空へ(前編)
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「……ところで、エース。お前は“海賊”と言ったな?なぜ海賊であるお前がワタシを助けた?」
「え?いや、だから……海賊とか関係なく、困ってるヤツを助けるのは当たり前だろ?理由なんか無ェよ」
その時、ホウオウの目つきが急に鋭くなった。
「命の恩人に対して失礼だが、ワタシは海賊をあまり好ましく思っていない。エース……お前がワタシを助けたのも、何か思惑があるのではないかと疑っているのだ」
「おいおい、冗談よせよ!おれは別に、何もやましいこととか考えてねェよ」
そう言って肩をすくめてみせるものの、ホウオウは依然厳しい視線を送ってくる。
「……では、お前が正しい心を持った人間かどうか、一つ試させてもらおう」
「試す?どうやって?」
エースが聞き返すやいなや、ホウオウは突如翼を広げて全身から炎を吹き出した。その勢いはエースの能力をはるかに上回り、周囲をあっという間に火の海へと変える。
「あれ?こいつはひょっとして……丸焼きにされるのはおれの方か?」
エースは少し困ったように辺りを見回した。炎が壁のように立ちふさがり、四方を完全に取り囲んでいる。逃げ場は無さそうだ。
「エース!ワタシの炎を受けて、見事生還してみせよ!」
ホウオウが深く息を吸い込んだ次の瞬間、口から灼熱の炎を吐き出した。エースは避ける間もなく真正面から火の洗礼を受ける。炎の壁も一際激しく燃え上がり、辺り一面が業火に包まれた――。
しばらくして、周囲に広がる火の海が徐々に鎮火していった。ホウオウは炎の中心をじっと見据える。
「……どうやら、お前は正しい心を持っていたようだな」
ホウオウの放った火が完全に消え去ると、そこには確かな五体で大地を踏みしめるエースの姿があった。強大な炎の直撃を受けたにも関わらず、彼は火傷一つ負っていない。
「あ〜、ビックリした。いきなり火を吐くなんて、お前まるで怪獣みたいだな」
エースは相変わらず屈託のない笑みを浮かべてみせる。ホウオウは全身に纏っていた炎を鎮めた。
「お前はワタシの“せいなるほのお”を受けても無傷だった。これは紛れもなく、お前が正しい心を持った人間であるという証だ」
「え?なんでそう言い切れるんだ?」
不思議に思うエースに、ホウオウは周囲を見てみるよう促す。
あれだけの激しい炎の中にあったはずの植物が、何一つ燃えていない。草も木も虫さえも、すべてが何事も無かったように動いている。焼けているのはエースがメラメラの実の能力を解放した辺りだけだ。
「何も…燃えてねェ……。あれだけ激しい炎があったのに……」
「ワタシの“せいなるほのお”は、悪意を持ったモノだけを焼き払う力だ。無駄な破壊は行わない……。エース、先程はお前を疑って本当にすまなかった。深くお詫びする……」
ホウオウが再び頭を下げる。その姿を無言で見つめていたかと思うと、エースは急に目を輝かせて詰め寄った。
「ホウオウ!お前、マジですげーよ!!もう、鳥とか神様とか怪獣とか関係無ェ!お前、白ひげ海賊団に入れよ!!おれがオヤジに交渉してみるから!!なっ!?」
思わぬ勧誘にホウオウは一瞬動揺したが、すぐに毅然とした態度で自らの意思を示す。
「気持ちは嬉しいが、それはできない……」
「大丈夫、心配するなって!!ウチには既に青い炎を出す変な鳥人間や、怪獣みたいにバカでかいヤツも居るんだ!!今更火を吐く不思議な生き物が増えても全然問題無ェよ!!……あ、それとオヤジや他のみんなも全員いいヤツだから、わざわざ試すようなことはしなくていいぜ!おれが保証する!!」
エースがなおも入団を勧めてくるが、ホウオウは頑なに拒んだ。
「悪いが、ワタシには果たさなければならない重大な使命がある……」
「なんだよ?使命って?」
すると、ホウオウは静かに遠くを見つめた。はるか彼方、世界の果てまで見通すような眼が何を捉えているのか定かではないが、その眼差しは力強く、どこか優しい――。
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