◆妄想の扉◆

□扉の向こう側(4)
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『龍の人』

早朝の冷たい風が皮膚を通り抜けていく。深く吸い込んだ息をゆっくりと吐き出し、精神を極限まで研ぎ澄ます。
心の臓が力強く脈打ち、手足の先まで余す所なくたぎる血潮を巡らせる。
足の裏から伝わる大地の鼓動は骨を、筋肉を、神経を震わせ、頭の天辺を突き抜けた。この大自然と呼吸を合わせれば、目を閉じていようともすべてが見える。
もっと集中するのだ。未だ見果てぬ境地を目指して、細胞の一つ一つにいたるまで体を奮い立たせる。
だが、同時に胸の奥底に潜む獣が渇きを訴えた。力を……もっと強い力を――。
呑まれてはいけない。この力は強者と闘うためのもの。殺戮のためではない!

ふと、目を開く。風が止んだ。山の端から静かに昇る太陽が、拳の先に待つまだ見ぬ強敵(とも)と、再会を誓った好敵手(ライバル)を映し出す。
前に進むしかない。俺より強い奴に、会うために――。
「昇龍拳!!」
まばゆい曙の光に向かって、リュウは拳に秘めた龍(たましい)を解き放った。



……龍じゃなくて隆ですね。
劇場版『ストリートファイターU』における、山頂で修行をするリュウをイメージして書きました。イラストでは“キャラ単体”ってよくあるんですが、小説で表現するのはちょっと難しいですね。
純粋に“強くなる”ために闘い続けるリュウは本当にカッコイイと思います。
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