◇逆転SS

□sweet&sweet
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…ふーーっ。
と、
すっきりして手を洗いながら、自分の顔、アヤサトマヨイの顔を鏡で見る。


「…ブスじゃないよね??むしろ、ユニークな可愛さだとは思うんだけどなぁ」

自分で呟く間抜けさ加減にあたしはちょっと切なくなった。

ふと、思いつき、洗面台の鏡の後ろの戸を開けてみる。


「……まだあるかな?」


なるほどくんのシェービングくりーむや歯みがき粉に紛れて、ちょっと懐かしいモノを発見した。


おねーちゃんの口紅。


何となく、あたしもなるほどくんも片付けられなくて、そのまま置いておいたおねーちゃんの使っていたモノ。


『真宵にはまだ早いわよ』

艶やかな笑みとおねーちゃんの声が浮かぶ。


「…今はどーかな?」

鏡に向かって、口紅を引いてみる。

…………。

何だか唇だけ浮いて見える。



「真宵ちゃんっ!」

「きゃわわっ!」


なるほどくんが勢いよく洗面所の扉を開けて飛び込んできた。


「……よかったー。気分でも悪くなったのかと、心配…」

「………?」


なるほどくんが、あたしをじっと見つめる。
な、なんだろう!?
思わずドキドキしながら見つめ返すと、


「ヒトでも食べたの?!」

「へっ?!」

「唇、真っ赤だよ」


……そうだった!口紅。

しかーし、今、なるほどくんは何と?!
思わず、睨み返すと、


「いや、ま、それは冗談だけどさ…」

「へ、変かなぁ?」

「………うーん、悪くは…ないと思うよ」

「……全っ然フォローになってないよ、なるほどくん」

「…ご、ごめん」


更になるほどくんをきつく睨みつける。


「…ま、でも」

「何ー?返答しだいでは…」

噛みついちゃよ!
って言おうとしたら、


「真宵ちゃんが、いつか誰かのためにお化粧したら、ちょっと…」

「ちょっと?」

「うん。ちょっと妬ける…かな」


なるほどくんは、あたしに背を向けると、頭をポリポリと掻いた。
…頬っぺた赤い?

(照れた…!)


「それにしても、そんなに気に入らなかったのかい?」

「何が?」

「とのさまんじうのさつまいも味。やっぱりレアなカニみそ味じゃなかったから拗ねたの?」

「…そーじゃないけど、そーいうことにしておいて!」

「………?機嫌が直ったならいーけど」



ほんのり焼いてくれた、なるほどくんのヤキモチ。

それは、恋人と名の付くお菓子の焼き立てより、今日のあたしには甘い味。




end


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