◇SOS団・SS
□夏草や兵どもが何とやら
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いつもの放課後
部室内
「それじゃ、みんな!今日は俳句を作るわよ〜」
「また唐突だな!」
「それはまた…随分涼宮さんにしては渋いセレクトですね」
「えと、はいくって確か…」
「五・七・五で表され、季語の入る日本古来の詩」
「さっすが、有希!」
「それくらいは俺だって、かろうじて解るが、何だって今、俳句なんだ?!」
「…そんなことが聞きたいの!?」
「あきれた眼で俺を見るな!そうだ。返答次第では、その提案は却下だ」
「しょうがないわね〜、想像力が足らないんだからキョンは」
「よしんば俺に溢れんばかりの想像力があったとしても、今、何故オマエが俳句などを提案するかはさっぱり解らん!」
「…ま、キョンだしね!」
…俺でなくても解らんぞ!と言う突っ込みは朝比奈さんを初めとする『あまり否定的な見解はNGです〜』の瞳により一端俺の中に収められた。
「昨日、テレビを見たのよ」
「どんな番組ですかぁ?」
「『その時、歴史が動いたかもしれない!』みたいなタイトルだったけど…」
「…ああ、N〇Kの『その時歴史が動いた』などの硬派な番組に比べると、噂やゴシップ性を煽った歴史物の番組ですね」
「ま、それよ。それ!でね、取り上げられていたのは松尾芭蕉だったんだけど、『彼は実はスパイだった?!』ってのが番組の主旨だったのよ〜」
「…なんじゃそりゃ」
「ああ、まあスパイとも言えますが、いわゆる隠密説ですね」
「伊賀の里の忍者…と言う一説はある」
「…で?何だ?日本一有名であろうと思われる『古池や蛙飛び込む水の音』に張れる俳句でも後世に残そうとでも言うのか?」
「ま、それも面白そーだけど、そうじゃないわ!」
「涼宮さんの引っ掛かりは芭蕉=隠密説ですよね?」
「そーよ、それそれ!あの有名な俳句だって、もしかしたら何らかの謎のメッセージなのかもしれないのよ!」
「まさか…スパイになるスキルを磨こう!とか何とかで芭蕉にならって俳句…とか言うんじゃあ…」
「あら!キョンにしては珍しく冴えてるじゃない!そうよ。今日のテーマは俳句から謎を作る!よ」
「…」
盛大にため息をつきかけた俺の隣で、
朝比奈さんが優しくフォローする。
「え、えと最初からなぞなぞ風な俳句は難しいと思うんですけど、俳句を作る機会なんてなかなか無いし、やってみたら面白いかなぁ…なんて」
「そうですね。最初から暗号を取り入れるのではなく、まずは単純に俳句を作るでよいのではないでしょうか?」