◇SOS団・SS
□かそけき光
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さてと、宿題を…
と教科書を手に取ったその瞬間、
「あははは!これウケるーっ!」
…遠慮なく響く甲高い女性の笑い声。
「〜もー、森さん、静かにしてください!」
「何よぅ、静かに漫画読んでるじゃないのっ」
ソファーに寝そべり、漫画を読む森さんの姿。手元にはポテトチップスとコーラもあるようです。
妙齢の女性であるだけに、何とも…です。
なぜ、僕の部屋にいるかと言うと、
「自分の部屋のクーラーが壊れたから。直るまで避難待機」
…だそうです。
「姉の至らない姿を見るようで忍びないのですよ。どうか、もう少しお静かに願います」
「姉〜?!私の弟ならそんな事は言わないはずよ。もっとおねいさんの言うことを聞くはずだわ」
むくりと起き上がり、あぐらを組む森さん。
…正直、申しましょう。
男らしいです(心の声)
「僕はこれから宿題をやらなければいけないのです。お願いですから、その間だけでも…」
「…優等生ぶっちゃって!」
「いえ、宿題をするのは常識、学生の本分だと思うのですが…」
「あー、そういうところが、ゆーとーせいって言うのよ!」
…そんなつもりはないのですが、
森さんがちょっと好戦体勢で来ましたので、僕は宿題に集中することにしました。
パラパラ…←教科書を捲る音。
バッサバサ←漫画を(勢いよく)捲る音。
…………。
やれやれやっと集中できる…と、思った途端、
「宿題の中身、何よ!」
森さんが机を覗きこみます。
漫画、あきたのですね?
「源氏物語です」
「あ〜、スケコマシ一代記ね」
「…ミもフタもないような言い方はどうかと」
まぁ当たらずとも…ですが、
「で、誰がタイプなの?」
「え?」
「源氏物語のオンナの中でよ」
「…好みのタイプですか?」
「そーよ。私は断然、朧月夜だけどね」
「…うーん。読破はしましたが、これと言って選べませんね」
「古泉のことだから、紫の上や明石の君なんかを選ぶかと思ったわ。才色兼備姫、どう?」
「…魅力的な方たちだとは思いますが…タイプかと言われると…」
「そ!じゃ、質問を変えます」
…いい加減、宿題をさせてほしいなぁとこっそりぼやきつつ、律儀に答えようとする、僕。
フェミニストと言うわけでもないのですけどね。