◇SOS団・SS
□幸福論 typeβ(素敵イラスト付…椛様より)
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「……あら。固まっちゃったわね」
「お前はTPOというものを考えんのか!?」
「考えたわよ。考えたから、今が旬ってわけじゃないの」
「…イツキの気持ちも考えてだなぁ」
「あたしが言いたかったんだから、いーでしょ?!」
父上と母上の日常茶飯事の会話は僕の耳の右から左へと流れていきました。
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『いーい?お相手はねー、隣国トゥモローランドのミクルン姫よ!朝日が昇る如く急成長してる国だし、持参金なんかもきっとガッポリ持ってくるに違いないわ!あ、だからといってあたしがお金目当てにあんたに進めてると思わないでね!?ミクルン姫は気立てもいーし、可愛いし、何より…』
……巨乳なのよ!
『……アホかお前はーっ!』
先ほどまでの母上と父上のやりとりを回想してみました。
…巨乳。
い、いえ違います!
断じてそこが気になったわけではなく。
…結婚。
確かに、そろそろ身を固めなくてはいけない年頃ではあります。
父上も母上もちょうど今の僕と同じ歳の頃に出会ったようですし…。
心優しいと人から薦められている女性であれば、多分、穏やかな時を共に過ごせる相手となるでしょう。
けれど、
…考えてしまうのです。
一度も恋もしないまま、身を固めてよいものか。と。
父上と母上は幸いなことにお互いがお互いに一目惚れで結ばれました。
当時は何て仲睦まじい王子と王女(またの名をバカップル)だと一躍有名になりました。
そんな二人を両親に持つ身ですから、尚更、心焦がす出会いに憧れてしまうのでしょう。
そのまま部屋でぼんやりしていると、扉をノックする音が聞こえました。
「どなたですか?」
「俺だ俺」
「父上?」
…珍しいこともあるものだと、扉を開けました。
「元気か?」
「おかげさまで」
「うむ…なんだ。まぁ、その…母上の言った件だがな、」
「ええ」
「…すぐ返事をしなくても構わんぞ」
「…」
「ま、王としてならそんなことは言うべきではないのだろうが…」
人には気持ちというものがあるからなぁ…。
ポツリと呟いた父上の言葉に、
「…ありがとうございます」
僕は深く頭を下げました。