◇SOS団・SS
□幸福論 typeβ(素敵イラスト付…椛様より)
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「本日はお疲れでしょう。よく眠れるように、脚湯などはいかがでしょうか?」
「…いや、大丈夫だ。このまま寝るとするよ」
「…そうですか。では、ごゆっくりお休みくださいませ」
よく気の利くと評判の侍女ソノオが去ったあと、身体をベッドに横たえました。
…今日は色々なことがあったなぁ。
ソノオの用意してくれた、枕から、仄かにラベンダーの様な香が漂います。
多分、安眠できるようにと、彼女がポプリなどで拵えてくれたのでしょう。
その香を何気なく吸い込むうちに、僕は自然と深い眠りに落ちていきました。
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…ザ…ザァ…
波の音?
瞼の裏にはゆらめく水面…?
どうやら、僕は海の中でたゆたっているようです。
…そして、隣には、
妙に深い色合いの瞳をした少女が同じようにたゆたっていました。
『…キミは誰?』
『……』
『…どこかで会ったことがある?』
『……』
『…これは夢かな?』
『……?』
『だって、海の中で喋れるなんて…』
『…ケ…テ』
『え?』
ワタシヲミツケテ……。
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「………キミはっ!」
思わず、叫んだ自分の声で目が覚めました。
「……夢か」
その割りにはまだ、自分が海の中にいたような感覚が残っています。
額に手をあてると汗ばんでいるのがわかりました。
喉も乾いています。
テーブルに置かれていた水差しに手を伸ばし、コップに水を注ぎ一気に飲みほすと、少し頭が冴えてきました。
周りを見渡すと、まだ陽は完全には出ていません。
「…妙な時間に起きてしまったな」
さっきまで見ていた夢のせいなのか、眠れるような気もしません。
「散歩でもするか」
ベッドを抜け出し、寝間着から服を着替えると、そっと、お城を抜け出しました。
…冷え込んだ空気が汗ばんだ身体に心地よく感じられます。
外はまだ少し暗いですが、暁の光が見え始めています。
そして、僕の足は自然と海の方へと向かっていました。