短編

□ふいうち
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『ペーンギーンせーんぱい!あっそびーましょ!』


とある日の放課後。みんなが部活に行く中、私は一人2つ上の3年生の教室に突入した。途端にクラスに残っていた先輩方の視線を独り占めするのだが、そんなのは最早当たり前なので気にしないでずかずかと窓際で本を読む一人の先輩まで歩みよる


『ペーンーギーンーせーんーぱーいっ!』

「そんなに叫ばなくても聞こえてる」


と、クールに言い放ったのは当然のことながら2つ上の3年生、ペンギン先輩。先輩はいつもペンギンの帽子をかぶっているちょーかわいい先輩。素顔はホントに仲のいい人しか見たことがないらしく、入学してからずっと先輩を追いかけているこの私でも未だに帽子の下はわからない


『聞こえてるなら返事くらいしてくださいよー』

「忙しい」

『本よりも私をみーてー!』

「はいはい、わかったから叫ぶな」


耳が痛い。そう言いながらカバンを持ち1人教室を出て行くペンギン先輩。じっとその様子を見つめていると、先輩は教室の入り口で止まりこちらを振り返る

来ないのか。まるでそう言っている風な先輩に私はにんまり微笑みダッシュで先輩の腕に抱きついた


「暑い」

『じゃあアイス食べましょアイス!最近駅前においしいアイス屋さんが来るんですよ!ワゴンはピンクでかわいいのに売ってるのはいかついおいちゃんなんです!』

「ギャップがすごいな」

『なかなかにおもしろいですよ』


くすりと笑うペンギン先輩。振りほどかれない腕をそのままに、2人で駅前に向かった。駅までは私がひたすら今日あったことを話し、先輩がそれに相づちを打つ。時々先輩が笑うのが嬉しくて、ちょっと情けないことでもついぺろっと話してしまう



『それでその子ったら授業中なのに…あ!ワゴン!』

「ずいぶんと人気なんだな」


クラスメートが今日やからしたことを話していたら、いつの間にか駅についてしまったようで視界にピンクのワゴンが映った。いつもだったらそんなに混んでないそのお店が今日はいつになく繁盛している。いったいどうしてだろう


「ロー?」

「ペンギンか」

『え!?ロー先輩!?え!?なんで!?』


ひょこっと2人で女子の群れからお店をのぞいたら、ペンギン先輩と同じクラスのちょーイケメンであるロー先輩がいらっしゃった。学校にいてもほとんど授業をサボっているとウワサの先輩が、なんでこんなところでかわいいエプロンつけてアイスクリームを売っているんだろうか


「新しいバイトってこれか」

「あぁ。時給がいいんでな。買っていくか?」

「そうだな、お前は何にする?」

『ちょっと現状についていけないけどとりあえずストロベリーで!』

「じゃあ俺はチョコバナナ」

「ん」


テンパっている私をよそにスムーズに会話を続けていたペンギン先輩にツッコミたい気持ちでいっぱいだけれど、ここはツッコんだらいけない気がしたのでひとまずアイスを待つことに集中した

しばらく待つと私が頼んだストロベリーアイスと、ペンギン先輩が頼んだチョコバナナアイスがカップに入ってやってきた。近くの木陰に並んで座り、アイスを一口


『っ〜〜んまい!』

「そうだな。あ、そういえばいかつい男ってのはどんなヤツだったんだ?」

『ん?あ、えっと、確か白い髪に休憩中にタバコじゃなくて葉巻をふかしてるヤクザみたいな人でしたよ』


前に何度か見た店主の特徴を告げながらアイスをたいらげていく。たまにペンギン先輩を盗み見ながらおいしいアイスを食べる。何コレ幸せすぎる


『ペンギン先輩』

「ん?」

『私今幸せです』

「単純だな」

『そんな言い方しなくてもいいのに〜』


私は大好きなペンギン先輩とおいしいアイスが食べられるだけで幸せなんですよ〜?その小さな幸せを単純だなんてひどいわ〜


『これでペンギン先輩が彼氏になってくれたら最高なのにな〜』

「はいはい」

『ちくしょう今日もフラれた!』


これで何度目だ!


「飽きないな、お前も」

『だって好きなんだもん』

「はいはい」

『ペンギン先輩ってなんて言ったら赤面するんですか?』

「なにを突然」

『いや気になったんで』


カラになったカップをわきに置いてペンギン先輩を見つめる。ペンギン先輩を追いかけて数ヶ月。慌てた顔、驚いた顔、照れた顔。そんなペンギン先輩の表情を今まで見たことがない。いつも小さくはにかんでて、私の発言に呆れているペンギン先輩しか見たことがない


『たまには違う顔も見たいです』

「はいはい。アイスも食ったしもう帰るぞ」

『えー?』

「か、え、る、ぞ」

『……はぁい』


先を歩くペンギン先輩に不満はたくさん。でもちゃんと待っててくれるペンギン先輩に私はやっぱり喜んでしまう。ちくしょうかっこいいな。なんて思いながら、私の歩幅に合わせてくれるペンギン先輩を盗み見る

やはり素顔は見えない


『もうすぐ夏休みですねー』

「そうだな」

『先輩はなにか予定あるんですかー?』

「それなりに」

『えー!?私まだ誘ってないのに予定あるんですかー!?誰とー!?誰とー!?』


きゅっ、と、右手に熱が触れた


「今できた、かわいい彼女と」

『……ぅ、え?』


い、ま…なんて…


「さてさて、夏休みはどこに行くかなー」

『え、せんぱ…え?…え!?』









(あ、言い忘れてた。好きだよ)
(!?―わ、わわわ私の方が好きだー!!)



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