短編

□してやられた
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『あーねみー…』


朝。学校へと続く長い道を歩きながらごちる

なんでこんな朝っぱらから学校なんぞへ行かなければならないのだろう。社会に出て役立つものなんてほんの一握りなのに、面倒だなホント


「うおいっす!今日も眠そうだなおい!」

『いっでっ!』


てとてと歩くあたしの背中をどっかのバカがおもっくそ強く叩きやがった。涙目でふり返るとそこには思った通りの男が一人、にやりと笑い立っている


『朝っぱらからなにすんですか、グラサン先輩』


憎しみを込めてそう呼ぶとグラサン先輩は「シャチな!」と叫ぶ。朝からうるさいホントなんなのこの人


「カッコイイ先輩にむかって態度の悪いヤツだなお前は」

『かわいい後輩の背中を朝からぶっ叩く人に言われたくないです』

「俺の愛だ」

『うわいらね』


愛とかこのご時世に気持ち悪いんだけどいやホントに


「お前そんなんだから彼氏の一人もできねぇんだよ」

『別に彼氏とかほしいと思ったことないっす』


いつの間にか並んで学校へと進むあたしと先輩。実はこれ、毎朝こうだったりする。なんかよくわからんが、いつからか急に先輩があたしを襲うようになったのだ。そして気づけば一緒に登校

正直面倒なのだが、断るともっと面倒なことになりそうなのであえて何も言わない


「枯れてるな」

『うっせ』


だがたまに断っておけばよかった、と後悔もする


「そういやお前この間やったアレどうした?」

『あれ?なにかありましたっけ?』

「それはガチでボケてんのか全力でボケてんのかどっちだ」

『全力で忘れようとしている』

「お前ってヤツは!」


だからうるさいっての


『アレでしょ?あのダッサイキーホルダー。家にありますよ家に』

「つけてねぇのかい!」

『言ったでしょ。アレダッサイんすよ』


と言うと先輩は「ダサくねぇよ!ちょーカッケーじゃん!」とのど仏を潰してやろうかと思わせるほど力強く叫んだ

いやあのキーホルダーをかっこいいと言えるヤツはたいていが中学生だと思うぞ。修学旅行でよく男子たちがわらわら買うようなヤツだもん


『あんな中二くさいヤツ誰がつけるか』

「俺とおそろだぞ!」

『余計につけたくなくなった』

「なんてことを!」


ちょ、もういい加減黙ってくれないかな。本気で耳障りなんだけどこの人。てか何で毎朝毎朝こんなうるさい人と学校行かなきゃならないの。意味がわからないんだけど誰か助けて


「木刀とどっちにしようか本気で悩んでアレにしたのに…」

『木刀だったら今頃先輩の脳天は貫かれていたことでしょうな』


そしてチョイスがマジで中学生なことを悟り恥じろ。高校生にもなってまだあんなモンにロマンスを抱いているその頭を恥じろ。そして埋まれ。物理的にその辺に埋まれ


「刀よりもやっぱ龍とかの方がよかったのかなぁ…」

『シャチ先輩、アウトー』

「え、ケツバット!?出てくるの!?黒い人たち出てくるの!?」

『でてこねぇよあたしが蹴るんだ』

「え?」


ドゴッ

鈍い音がこだまする。沈むシャチ先輩を見下ろし盛大に嘲笑ってやった


「あ、あいかわらずいい蹴りだ…っ」

『気持ちが悪い』

「俺はだたお前に喜んでほしくてだな!」

『出直してこい』


あたしの好みを理解した上でその中二くさいモンをよこすのならばマジで制裁をあたえる。つかシバく。二度とあたしに近づこうなんて思えないほどの傷を負わせてやる。心にも体にも


「俺の好きなモンをお前にも好きになってほしいだけなのに!」

『何故』

「え、だって俺お前のこと好きだもん」

『は?』


え?今コイツなんてった?


「あれ?言ったことなかったっけ?俺お前のこと好きだぜ」

『………は!?』


は!?はぁ!?


『す、すすすき、すきって…!』

「うわ顔あかー。今までどんなことしても表情変えなかったのにこりゃスゲー」

『ううううるさい見るな中二病患者!』

「いやいや見ますよ」

『!?』


突然の告白にテンパり逃げようとするあたしをシャチ先輩が引き留める。掴まれた腕をふり払おうとするのだが、こういう時に限ってヤツは手加減をせずあたしを壁に追い詰めた


「なんだよお前ちょーかわいいじゃん。いやかわいいのは前から知ってたけど」

『な、っ!』

「意外とにぶいんだな」

『う、うるさっ!てか近い離れろ!』

「やだね」

『っ!』


近づいてきた顔に反射的に目を閉じると、思っていた場所ではないところに柔らかいなにかが触れた。そして耳元で小さく


「今日は、これでカンベンしてやるよ」


と、囁き先輩は一人で学校へ行ってしまった


『………』


残されたあたしは、悔しい事ながら解放されたとたんにその場に崩れ落ちてしまった。未だに熱い顔を手でおおい、うなだれていた頭を上げる


『…あんの、変態野郎…っ』


次会った時は、おぼえてろよ!





(そんなとこで何座ってんだ)
(ボニーちょっと協力して!)



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