短編小説

□溶ける心
1ページ/3ページ



朝、目が覚めて真っ先に思い浮かぶのは…


制服のスカートを穿き、鏡を見て髪を整える。
昨日切ったばかりの前髪と、小さい花のモチーフのついたヘアピン。これくらいなら俺がつけてても問題ないだろう。
天気予報と朝の占いをぼんやり眺める。
「という訳で、今日は一日晴れ模様となるでしょう。」
ほー、そりゃ結構なこった。
「続いては占いのコーナーです!…」
ついてないことに、俺の星座は最下位だった。
「…そんなあなたの運気をあげるラッキーカラーはピンク!ピンクの小物を持っていれば気になる彼とも急接近!?」
別に占いを信じてる訳じゃねぇけど、自分に言い訳をして俺はピンクの傘を鞄に入れた。雨降らねぇならいいだろ。

「おはようございます。」
朝から爽やかな声。
「おー。」
なんだか気恥ずかしくてそっぽを向く。
こいつのことが、す、好きだなんて言える訳がない。
「ヘアピン、似合っていますよ。」
お前に見て欲しくてつけたなんて言ったらこいつはどんな顔をするだろうか。

いつも通りのつまらない授業を終えて、軽く伸びをして外を見ると、灰色の空から雨が降りだしていた。
うそだろ?俺今日ピンクの傘しか持ってねーよ!
あんなのさして外歩けるか!
とりあえず靴をはきかえて玄関に出ると、折り畳み傘を取り出す生徒や、本降りになる前に走って帰る生徒でざわざわとしている。
「困りましたねぇ。」
いつもの笑顔でいつの間にか横に立っていた古泉。
とても困っている顔には見えない。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ