短編小説

□禁忌
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「素直に涼宮さんに I love you と囁けばいいんですよ。」
「彼女と恋人同士になればいいじゃないですか。」
「そうすれば世界は安定して、僕も貴方も涼宮さんも幸せです。」

なんて自虐的。
これが組織の本音、僕の建前。
二人が恋人同士になれば確実に世界は、彼女の精神は安定するだろう。
そうなった方がいいなんてこと頭では分かっているのに、僕の胸はそんな言葉を吐くたびにチクチクと痛む。
本音を言えば彼が欲しくて、自分のものにしたくてたまらない。
だけど、世界と僕個人の気持ちを天秤にかけたとして、どちらが重いかなんて聞くまでもない。
だからせめて、早く二人が恋人同士になればいい。
僕の自制心が崩壊する前に。

「なぁ。」
ボードゲームの途中、彼のが言葉を発する。
女性陣はついさっき帰って行った。もうすぐ下校時間、外も薄暗い。
今日は、いつもは早く帰りたがる彼が珍しく僕を引きとめた。
「もう少しチェスをしないか。」と言って。
もちろん僕はそれを快諾した。
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