短編小説

□禁忌
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「お前さ、たまには自分に素直になってもいいんじゃないか」
彼の口が先程の続きの言葉を紡ぐ。
「それは、どういう意味ですか?」
いつものポーカーフェイスを保ちつつ、内心では少しひやりとする。
彼が僕の気持ちに感づいたのかもしれない。
それは、あってはいけないことだ。
「んー、そのままの意味だ。」
駒を動かしながら彼は言う。
「最近何となく無理してるみたいに見えるからな。
俺にくらい、たまにはありのままのお前で接してくれよ。」
チェックメイト、ニッと笑って彼は言う。
「さ、帰るか。引きとめて悪かったな。」
かたん、と音を立てて立ち上がる。眩暈がした。
彼に歩み寄って、両腕を捕らえて壁に押し付ける。
僕の自制心は、先程の彼の一言で脆くも崩れ去った。
「な、んだよ、俺、なんか悪いこと言ったか?」
「…これが、ありのままの僕です。」
乱暴に口付けると、彼はくぐもった声を出そうとはしているものの、思ったほどの抵抗はなかった。
押し付けるだけの拙い口付け。彼のわずかな抵抗は次第になくなった。
唇を解放すると、苦しげにはぁはぁと言いながら目に涙をため頬を染める彼。
そのまま連れ去ってしまいたいという想いを何とかこらえる。
「お前な…」
そんな顔で睨まれても迫力など皆無だ。
「冗談です。」
いつもの笑顔の仮面でそう言い、彼に背を向けドアに向かうと、辛うじて聞き取れる小さな声。
「お前は、ハルヒのことが好きなんだと思ってた。」
ドアノブに手をかけたまま、思う。彼は意外と周りのことを見ているんだと。
きっと彼は、涼宮さんと彼が会話をしているときに僕が彼のことを見ていたのを、勘違いしたんだろう。
そっと、彼が近づいてきて僕の背に寄り添い、肩に頭を預ける。
それきり僕たちは言葉を交わすことなく薄暗い部室で立ち尽くすのだった。

禁忌

重なった想いの行き場は、一体どこにあるというのだろう。





無理やりな古泉はちょっと楽しいです(^ω^)
私の中での二人のイメージは基本こんな感じ(´・ω・`)
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