短編小説

□やきもちビターチョコ
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バレンタインなんか嫌いだ。チョコがもらえないから?製菓会社の陰謀?んなことはどうでもいいんだよ!


クラスの女子に、なんだかよく知らない女子に、とにかく多くの女子に。

「悪いけど古泉君に渡してくれない?アンタ知り合いでしょ、ね、お願い!」
「キョンさん、ですよね?これ、古泉君にわたしてください!」

まさか女の子に対していやだね、なんて言えるわけもなく、断る理由もなく、6限が終わるころには抱えきれないほどのチョコが集まっていた。
だからバレンタインなんか嫌いだ!(ついでにそれを見越して大きめの紙袋を用意していた俺も嫌いだ…。)

力なく部室のドアを開けると、そこに居たのは古泉だけだった。
「ハルヒたちは?」
「バレンタインチョコを作るそうですよ、長門さんの家に行ったようです。」
「へー。」
適当に鞄を置くと、預かったチョコを古泉に渡した。
「ほらよ。」
「…これは?」
「そんぐらいわかるだろ、お前にだってよ。」
もてもてだな、と皮肉をこめて言うと古泉は苦笑した。
今日は何もかもが胸糞悪い日だ。ハルヒたちもいないならここに居てもしょうがない、帰るか。鞄を持ち古泉に背を向けると、いつの間にか近くに来ていた古泉に腕を掴まれた。
「あにすんだよ?」
「どちらへ?」
「…帰る。」
何だか知らんがバツが悪くなって、ぼそりと答える。
「まだ貴方から貰っていないのですが。」
「なにを?」
問いかけてはいるが、言わんとすることはわかっているし、実は用意もしてある。
「わかりませんか…。」
悲しそうに言うこいつは、俺がその顔に弱いのも、チョコが用意してあることもわかりきっているのだろう。
「ん。」
照れ隠しに箱を古泉に無造作に押し付ける。
「ありがとうございます。」
極上の笑みを浮かべて俺を見る古泉。
「生チョコ。お前の嫌いなビターチョコにしてやったぞ。」

苦笑いするこいつに、本当はお前の好きなミルクチョコだなんてことは教えてはやらない。





ツンデレ(´д`*)

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