短編小説

□If...
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会う時間も、付き合い始めに比べたらめっきり減って。
いつしか俺たちはたまに休日が合うと古泉の家で会って、雑談もそこそこにベッドになだれ込み、ことが終わればどちらともなく眠りに落ちて会話なんてものは皆無。
愛を囁き合うことも…。俺たちの心はいつからこんなに離れたのだろう。
あいつはそれに慣れて何とも思わないみたいだが、俺は違う。
今日こそは、この曖昧な関係も終わりにする。そうきめてここに来たのに。
取り留めのないことを話しながら古泉の手をぎゅっと握る。以前のこいつなら、どうしたんですかとか何とか言って抱きしめてくれたような気がするが、そんな昔のことはもうあまり思い出せないほど遠くて。

暗い部屋で裸で抱き合って、乱れて。でもそれは欲を満たすだけのひんやりとした儀式。
こみ上げる涙を、古泉の肩にかみついて誤魔化す。ついでに付けたキスマーク。
せめてそれが消えるまで…。

情事後に話しかけるのはいつ振りだろうか。
「なぁ、」
何ですか、とけだるい声が返ってくる。
「俺達もうお終いにしよう。」
そういうと、古泉が俺を抱きよせたから。
これが最後にならないように祈りながら俺はこいつに口付けた。





倦怠期っていうのもたまには有りかと。

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